第59話 長い洞窟の先に
「とりあえず、洞窟には着いたけど結構長いな」
クモのような魔物との戦闘から数日後、俺たちはワイバーンが住み着いているという洞窟にやってきていた。
以前は森のてっぺんに着くなり秘薬を回収して帰ってしまったので、こんな場所があるとは思わなかった。
多分、アニメでもこんな洞窟のシーンはなかったと思う。
じめっとした洞窟の中を進んでいく道中も魔物に遭遇したが、リリナもアリシャも強くなってくれているので、比較的楽に洞窟の奥へと進んでいくことができた。
俺はちらっと隣を歩くアリシャを見ながら、ふむと呟く。
「アリシャも『潜伏』を覚えてくれたし、もう本格的な狙撃手だよな」
「そう言ってもらえて嬉しいです。エルフは狩猟を行うことも多いので、気配に敏感だから習得が早かったのかもしれませんね。ワイバーンとの戦闘前に覚えられてよかったです」
アリシャはそう言うと、ニコッと笑う。
ここまで来る道中、アリシャには魔物にばれない位置から何度も弓で『狙撃』をして援護をしてもらった。
それに加えて、極力不要な戦闘を避けるために一緒に『潜伏』のスキルを使ってきたからか、アリシャも『潜伏』のスキルを取得したのだった。
……パーティメンバー全員が『潜伏』のスキル持ちって、なんか悪いことをする集団みたいだな。
でも、狙撃手と暗殺者がパーティにいると思うと、凄い心強い気もする。
俺がそんなことを考えていると、隣でリリナが俺の服の裾をくいくいっと引く。
「ロイドさま、私は? 私もお役に立ててますか?」
「もちろんだ。敵の攻撃を受け流す『流動』とかも覚えるし……どんどん達人になっていくな、リリナは。本当に心強いよ」
「にへへっ、そうですか? これも愛の力かもしれませんね!」
リリナは俺の褒められたのが嬉しかったのか、両頬に手を置いて銀色の尻尾をブンブンと振っている。
アリシャが道中の魔物を倒して活躍していく中で、リリナも新しいスキルを身に着けて確実に成長していた。
リリナ曰く、『私もロイドさまのお役に立ちたいと強く思いながら戦っていたら、新しいスキルを覚えました! 愛の力かもしれません!』と本気の顔で言っていた。
普通なら信じられないことなのだが、ヒロイン補正という力がある以上、強く否定できないのが現状だ。
まぁ、結果として強くなっていっているわけなので、嬉しい限りではあるんだけどな。
「あれ? そういえば、ここら辺は魔物が少ないな」
さっきまでは色んな魔物の相手をしてきたはずなのに、ここ数分魔物と出くわしていない。
俺がなぜだろうかと思っていると、リリナが銀色の耳をピコピコと動かす。
すると、リリナの表情がピリッとしたものに変わる。
「リリナ?」
「ロイドさま。この先から凄い大きな音が聞こえます」
「大きな音?」
俺はアリシャと共に耳を澄ましてから、顔を見合わせて首を傾げる。
どうやら、俺たちには聞こえない何かがリリナには聞こえているらしい。
「とりあえず、慎重に向かってみるか」
俺がそう言うと、リリナとアリシャはこくんと頷く。
俺たちは『潜伏』のスキルを使って、慎重に洞窟の奥へと向かっていった。
すると、しばらく進んでいった先からかすかに光が漏れてきた。
何だろうかと思って物陰から覗いてみると、洞窟の天井に穴が開いており、そこから陽の光が入ってきていて、神秘的な光景が広がっていた。
「……綺麗だけど、感動している場合じゃないよな」
俺はその光に照らされている大きな体の魔物を前に、顔を引きつらせる。
水色の鱗で覆われた体に大きな両翼が特徴的な姿は、以前相手にしたイグアナのような魔物よりも一回り以上大きくて、恐竜染みている。
それもそのはずだろう。
だって、俺たちの目の前にいるは、討伐対象であるワイバーンなのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます