第18話 リリナの戦闘スタイル


「ブルルッ!!」


 猪の魔物はリリナが突っ込んでいくのを見て、警戒し始める。


 そして、魔物は威嚇の声を上げた後、リリナに突進するための助走を開始した。


 さて、リリナは魔物相手にどうやって戦うのだろうか。


 俺がそう考えてリリナを見ていると、リリナはそのまま一直線に魔物に向かって突っ込んでいった。


「え、嘘だろ。正面から行く気か?」


 相手は今にもスキルを使おうとしているのに、そこに向かって突っ込んでいくなんてあまりにも無謀だ。


 いくら小さな猪の攻撃といっても、まともに食らえば怪我をしかねない。


「やあっ!」


 しかし、リリナは俺の心配をそのままに、大きく跳躍した。


 そして、魔物がスキルを使うよりも早く魔物の間合いに入ると、そのまま振り上げた短剣を振り下ろす。


「ギャンッ!!」


 リリナは斬りつけられた魔物が怯んでいるうちに、二手三手と力いっぱいに攻撃をする。


 やがて、魔物は力なく倒れてそのまま立ち上がらなくなった。


「ロイドさま! やりました!」


「あ、ああ、そうだな。……そういえば、アニメでもリリナって結構パワー系の戦い方だったな」


 俺は倒れている魔物に近づいて、傷跡をじっと見る。


 うん、結構深くまで刀が入っているんだな。


 リリナの見た目からは想像できないくらい、リリナは素の状態でも力があるらしい。


 まさか、主人公のケインの『支援』なしの状態でここまで力が強いとは。


 でも、今の戦い方は相手の方が素早かったら通用しない戦い方だ。そして何より、カウンターにも弱いだろう。


 多分、アニメではそこの弱点を無理やり『支援』を使ってカバーしていた。


 誰にも負けないパワーとスピードがあれば、今の戦い方は最強だもんな。


「ロイドさま。いかがだったでしょうか?」


 俺がじっと魔物を見ていたからか、リリナが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。


「ん? ああ、凄かったよ。想像以上だ」


「そ、そうですか。よかったです!」


 リリナはそう言うと、ぱぁっと明るい笑みを俺に向ける。


 銀色の耳がぴょこぴょこっと揺れていて、何かを要求されているような気がした俺は、そっとリリナの頭を撫でた。


「~~♪」


 この褒めたら撫でるくだりは、毎回やる感じなのかな?


 いや、好きだったアニメのヒロインの頭を撫でられるというのは嬉しいこと何だけど、少し照れくさい。


 俺は恥ずかしさからリリナのことをまっすぐ見られなくなり、誤魔化すように視線を逸らす。


「そういえば、リリナはお父さんに戦い方を教わったんだよな?」


「はい! お父さんは勇敢な戦士だったので、その戦い方を教わりました!」


「なるほど。まっすぐ敵に立ち向かうさまは、戦士とも言えるか」


 女の子のリリナでこれだけ力があるのだから、大人の男性だったら力任せに戦っても何も問題はないのだろう。


 むしろ、それこそが自分の長所を生かした戦い方だと思う。


 けれど、ケインの『支援』がない状態の今のリリナが正面から魔物と戦うやり方は得策ではない。


 リリナの獣人としての長所を生かすのなら、別の長所を伸ばしてあげた方がいいだろう。


「リリナが悪くなければ、しばらくは戦い方を変えてみないか?」


「戦い方を変えるんですか? でも、私他の戦い方知りませんよ?」


 俺が撫でる手を止めて言うと、リリナは可愛らしく小首を傾げる。


 確かに、今のリリナは知らない戦い方だろう。


 だって、今から提案する戦い方は、アニメの三期で判明するリリナのサブジョブみたいなものだからな。


「狩りをしたことがあるなら必然的に鍛えられている能力がある。そこをもっと伸ばすんだ」


 俺はそこまで言ってもピンときてなさそうなリリナに笑みを向けてから、言葉を続ける。


「暗殺者みたいな戦い方をしてみないか?」


 そう、これは少し早すぎるジョブチェンジなのだ。



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