第6話 魔物のスキル
「よっし。とりあえず、解体終わりっと」
俺は倒した鹿の魔物の解体を終えて、一息ついていた。
ロイドが誰かから奪った『鑑定』のおかげで、魔物のどこが金になるのかなどの情報も簡単に調べることができた。
さすがに、狩った魔物の素材全てを持って帰るのは骨が折れるので、このスキルがあったことは正直助かった。
やっぱり、転生先としてロイドの体は結構優秀な体みたいだ。
まぁ、その分どこかで『鑑定』を奪われて困っている人がいるわけだが、これは気にしても仕方がないだろう。
使えるものは何でも使っていかないとな。
俺は解体を終えた鹿の魔物の素材をしまってから、小さく息を漏らす。
「さて、どうすうるか。初めての戦闘なわけだし、今日はこれで終わりでもいいんだけど……さすがに、さっき奪ったスキルは気になるよな」
先程鹿の魔物から奪ったスキル『強突(魔)』。
これまでに奪ったスキル一覧を見ても、(魔)が付くスキルはほかに見当たらなかった。
ただの『強突』はあるみたいだったけど、一体普通の『強突』と何が違うのだろうか?
魔物から奪ったスキルだと分かるための表記なのか?
いや、同じ効果ならなにも分ける必要はないよな。
「考えていても仕方がないか。使ってみた方が早いよな」
俺はそう考えて、スキルを試せる魔物を探すために、もう少しだけ森の奥に進むことにした。
「あれは……狼? いや、山犬か?」
スキルを試すことのできる魔物を求めて森の中を歩いていると、二体の小型の狼のような魔物を見つけた。
水辺で水を飲んでいるのか、背後から近づいている俺には気づいていない様子だった。
「うん。不意打ちで試してみるか」
せっかく、『強突』と『強突(魔)』という二種類のスキルがあるわけだし、比べてみるのもいいだろう。
俺はそろりとそろりと魔物たちに近づいてから、気づかれないように剣を引き抜いて『強突』のスキルを発動させた。
「『強突』!」
すると、俺の体は突きをする姿勢を取った後、一体の魔物に向かって勢いよく突っ込んでいった。
そして、魔物が振り返るよりも先に、力強い突きを魔物に叩きこんだ。
ブシャッ!
「キャンッ!」
俺の突きは魔物の急所を突いたらしく、剣を引き抜くと魔物はそのまま力なく倒れた。
なるほど、名前通りのスキルみたいだな。
「グルルッ」
「おっと、そうだった。もう一体いたんだった」
俺は隣で唸りだした声を聞いて、すぐに切っ先をもう一体の狼のような魔物の方に向ける。
もう一体の魔物は突然仲間がやられたことに驚きながら警戒しているみたいで、すぐにこちらに仕掛けてはこなかった。
それなら、こっちから仕掛けるか。
(魔)と付くスキルが普通のスキルと何が違うのか。それを試させてもらうとしよう。
俺は少し後退って距離を取ると、再び剣を構える。
「いくぞ、『強突(魔)』! って、うおっ!」
俺がスキルを発動した瞬間、全身に力がぐっとかかるのが分かった。
そして、俺の体は小さな爆発でも起きたんじゃないかというくらい力強く地面を蹴って、魔物に一直線に向かっていった。
「お、おおおっ!」
時間にして一瞬のこと、地面を蹴った勢いをそのままに俺の剣は鋭い突きを魔物に食らわせていた。
ザアアァァン!!
「ギャんッ!!」
そして、俺の突きを食らった魔物は後方に吹っ飛び、水辺近くにあった木に体を叩きつけて、そのまま動かくなった。
「な、なんだ今の突きは」
どう考えても先程の『強突』とは別物のスキルだ。
いや、全く別物という訳ではないのか。強化版? みたいな感じの感触だ。
「……もしかして、魔物が使うスキルって、同じスキルでも人間のよりも強いのか?」
ということは、倒した魔物のスキルを奪いまくれば、俺ってかなり強くなれるんじゃないか?
これって、かなりチートなのでは?
俺は思いもしなかった展開を前に、笑みを浮かべずにはいられなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【作品のフォロー】、【評価☆☆☆】で応援してもらえると嬉しいです!
※評価は作品画面の下にある『おすすめレビュー』の『☆で称える』から行うことができます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます