第7話 スキルのレベルアップ
「まさか、魔物から奪ったスキルがここまで強いとはな」
人間から奪ったスキルと魔物から奪ったスキル。その両方を試すことで違いが明確になった。
明らかに魔物から奪ったスキルの方が強い。
でも、なんで魔物から奪ったスキルの方が強いんだ?
ふむとしばらく考えていると、一つの仮説が浮かび上がった。
「人間と魔物は筋肉量も魔力量も違う。当然、スキルを使った時の威力も違う……もしかして、その威力をそのまま盗むことができるのか? ロイドの『スティール』は」
詳しい原理は分からないが、それなら魔物から奪ったスキルの方が強いのも納得いく。
そうなってくると、ロイドの『スティール』もケインに負けないくらいチート染みてる気がするな。
……うん。ギルドの嫌われ者だということを除けば、転生先としては当たりかもしれない。
「それじゃあ、今度はこいつらのスキルを奪うとするか」
俺は目の前で転がっている一体の狼のような魔物に手のひらを向けて、ぐっと力を入れる。
「『スティール』」
俺が『スティール』を使うと、手のひらがぱぁあっと微かに光った。
そして、ステータスを表示する画面が目の前に現れ、そこには次のように書かれた文字が書かれていた。
『スティールによる強奪成功 スキル:風爪(魔)』
「風爪、か。さて、どんなスキルなのか……」
なんとなくスキル名から想像はつくが、実際に使ってみないことには分からないよな。
俺はむむっとしばらく考えてから、あたりを見渡してみた。
すると、そこには先程『強突(魔)』を使った時、魔物が体を叩きつけた木が立っていた。
うん、試しにはちょうどいいかもしれないな。
俺はそんなことを考えながら鞘から剣を引き抜いて、軽く剣を振り上げて構えた。
「『風爪(魔)』!」
ザシュッ!!
俺が剣を上から振り下ろすと、斬撃が勢いよく木に向かって飛んでいった。
そして、その斬撃は鈍い音と共に木に深い刀傷を残した。
木の幹が太かったせいか折れることはなったが、ただ魔物が悪戯に引掻いたにしては深すぎる傷跡だ。
「……これ、ほんとにチート過ぎるスキルだな」
木に付けられた刀傷を撫でながら、俺は感心するようにため息を漏らす。
それから、ふと足元に転がっていたスキルを奪っていないもう一体の魔物の死体を見て、俺はふむと少し考える。
「こっちの魔物に『スティール』をすると、どうなるんだ?」
また『『風爪(魔)』』のスキルを奪うことになるのだろうか?
いや、多分その可能性は低い気がする。
ぱっとスキル一覧を見た感じだと、被っているスキルというのは見当たらなかった。
そうなると、スキルを重複して覚えることはできないのだろう。
でも、無理やりスキルを奪って、奪ったスキルが被っていたらどうなるのだろうか。
『スティール』事態が失敗として終わるのかな?
俺はそんなことを考えながら、そっと手のひらを足元の魔物に向ける。
……何事も試してみないことには分からないよな。
「『スティール』」
俺が『スティール』を使うと、手のひらが微かにぱぁっと光った。
あれ? 成功したのか?
目の前に現れたステータスの画面を見ながら、俺はそんなことを考える。
しかし、そこに表示された画面は意外な物だった。
『スティールによる強奪成功 スキル:風爪(魔)』
『スキル重複によりスキルを統合。レベルアップ。 スキル:風爪(魔)』
「レベルアップ?」
俺は初めて見る事態を前に首を傾げる。
……確か、この世界のスキルってレベルアップとかしなかった気がするんだけど。
一体、何がどうなっているんだ?
俺は予想外の展開を前に眉をひそめる。
しばらくそうして考えてみたが、まるで答えが分かる気がしなかった。
俺は諦めるようにため息を漏らす。
「でも、レベルアップしたってことは、何か違うってことだよな」
俺はじっと『風爪(魔)』で傷をつけた木を見てから、あたりをきょろきょろと見渡す。
「あ、あれが同じくらいの太さの木か」
表記上は何も変化が見えないレベルアップ。
しかし、レベルアップしたというのに何も変わらないなんてことはないはずだ。
それを確認するために、俺は先程と同じくらいの太さの木にレベルアップした『風爪(魔)』をぶつけてみることにした。
「さて、どうなるか見ものだな」
俺は剣を軽く構えて、先程と同じ要領で『風爪(魔)』のスキルを使用する。
「風爪(魔)! ん? おおっ!」
俺が剣を振り下ろした瞬間、先程の風爪(魔)よりも数段階威力のある斬撃が木に向かって飛んでいった。
バギャッ!!
勢いよく飛んでいった斬撃は木を捉えると、鈍い音を奏でる。
メリッ、バキバキッ、ズーンッ!
そして、レベルアップした『風爪(魔)』は、先程は切り倒すことができなかった太さの幹を簡単に斬り落としたのだった。
「……まじか、レベルアップ」
俺は目の前で起こる事態についていけず、少し引きながらそんな声を漏らすのだった。
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