第5話 スキルを奪うスティール
とりあえず、現段階の強さがどんなものか確認しておこう。
それに、過去にロイドが『スティール』で奪ったスキルが使えるのかも確かめる必要がある。
俺はそんなことを考えて、森の奥へと進んでいった。
森の奥へと進んでいくと、茂みの奥からガサゴソッと何かが動く音が聞こえてきたので、俺は腰に下げている剣を引き抜き、切っ先を茂みの方に向けた。
すると、茂みの中からひょこっと鹿のような魔物が姿を現した。
ちょうど奈良の鹿公園にいるくらいの大きさだ。
「とりあえず、こいつの相手をしてみるか」
俺が剣を構えていることに気づいた魔物は、慌てて逃げようと俺に背中を見せた。
この隙をつかない手はない。
そう思った俺は、すぐさま『スティール』で奪ったスキルの中から、一つのスキルを使用することにした。
過去にそのスキルを使ったことがあるのか、ロイドの体は考える必要なくスムーズに動く。
「『雷斬』!」
俺がそのスキルを使うと、振り抜いた剣の先から雷をまとった斬撃が飛んでいった。
ザシュッ!
「ピィィィィ!!」
そして、見事に『雷斬』をくらった魔物は悲鳴を上げてから、その場にバタンと倒れた。
どうやら、さっきのスキルは大規模な技ではないが、速さがあるスキルみたいだ。
使い勝手としてはまぁまぁかな。
「やっぱり、『スティール』で奪ったスキルは俺も使えるのか」
俺は倒れている魔物を見ながらそう呟いて、剣を鞘に戻した。
あとは、倒した魔物を解体しないとだよな。
鹿の解体なんかしたことはないけど、解体をしようとすると不思議とその方法が頭に浮かぶ。
どうやら、ロイドが知っていることなら体が勝手に動いてくれるらしい。
俺は解体用のナイフを取り出して、魔物の近くに腰を下ろした。
そして、ナイフで血抜きをしようとしたとき、ふとその手を止めた。
「……魔物に『スティール』をしたらどうなるんだ?」
いくら便利な能力と言っても、これまで人間が努力してきたスキルを奪うのは抵抗がある。
でも、せっかくのユニークスキルなら使いたいという気持ちもある。
それなら、魔物のスキルを奪えばいいのではないだろうか?
……いや、ていうか、まず魔物のスキルなんて奪えるのか?
「まぁ、物は試しだよな」
俺は手のひらを倒れている魔物に向けて、ぐっと腕に力を入れる。
「『スティール』」
俺が『スティール』を使うと、ぱぁっと手のひらが軽く光った。
成功したのか?
そう考えていると、突然ぱっとステータスを表示する画面が現れた。
そして、そこには次のような文字が表示されていた。
『スティールによる強奪成功 スキル:強突(魔)』
「お、魔物のスキルも奪えるのか……ん? 強突(魔)? (魔)ってなんだ?」
俺は初めて見る表記を前に、ただ首を傾げるのだった。
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