第4話 ギルドの嫌われ者


「……参ったな」


 冒険者ギルドでパーティを紹介してもらおうとしたのだが、ロイドという人物は俺の想像を超えるほど嫌われている存在らしい。


 紹介が無理なら自分の足で何とかしようと思ったのだが、何も知らなそうな冒険者に声をかけても、周りの冒険者に邪魔をされてパーティを組むことができずにいた。


 気がつけば、俺の周りには誰も近づかないどころか、俺が近づけば逃げていくような構図が出来上がってしまった。


 ガラが悪いのかなと思って、ツンツンの金髪は下ろして威圧感を失くしたはずなのだが、問題はそこではないらしい。


 多分、これが本来のギルドでのロイドの立ち位置なのだろう。


 毎日のように冒険者に嫌がらせや八つ当たりをしていれば、嫌われない方がおかしい。


 ……俺自身は何もしてないのだが、これも悪役に転生した定めなのだろう。


 そうは思っても、これほど嫌われているというのは結構くるものがあるな。


「仕方ない。少しの間ソロで活動してみるか」


 俺はそんな言葉と共にため息を漏らして、一人とぼとぼと冒険者ギルドを後にするのだった。




 そして、一人やってきた街から少し離れた森の中。


 街に関する知識や森への道順などはロイドの頭の中にあったらしく、森までは迷うことなく来ることができた。


 俺はこれから異世界転生後、初めての魔物との戦闘をすることになるだろう。


 まともに喧嘩もしたことがないのに、一人で魔物に立ち向かうのは危険かもしれない。


 それでも、俺には何とかなるだろうという確証があった。


「ステータス」


 俺がそう唱えると、目の前に小さな画面が表示された。


 そして、そこには次のような文字が書かれていた。



レベル …… 46

攻撃 …… 453

防御 …… 365

体力 …… 423

魔力 …… 389

早さ …… 372



「うん。ロイドは雑魚キャラって訳じゃないし、ある程度の戦闘力はありそうだな」


 ロイドはケインのようなチート染みたスキル持ちには勝てないが、C級冒険者くらいの力はある。


 そして、剣も魔法も使える器用さもあるキャラだ。


 だから、街から近い森で出てくる程度の魔物相手に苦戦することはないと思っていた。


 どうやら、その考えは間違っていないみたいだ。


 これだけのステータスがあれば、簡単には魔物には負けないだろう。


「さて、問題はスキルだな」


 俺は苦笑いを浮かべながら、少し目線を下げる。


すると、そこにはスキルに関する情報が表示されていた。



スキル …… 『斬刃』『瞬剣』『基礎魔法』『中級魔法』『スティール』



「なるほど。こんなもんか」


 この世界では、魔法はスキルの一つという位置づけになっている。


『基礎魔法』のスキルの中に、『基礎魔法 火球』といった具合に魔法が含まれる形だ。


 そして、魔法系統のスキルは魔法適正のある者しか使えず、剣士特有のスキルは剣士適性のある者しか使えない。


 だから、その両方のスキルを持つことができるロイドは、この世界では珍しい存在だ。


魔法も剣も使える勇者のような存在であることから、ロイドのようなタイプは勇者職と言われている。


 そして、勇者職というだけでも恵まれているのに、ロイドはそこに加えてユニークスキルを持っている。


 それを悪用したことが、ロイドがギルド中から嫌われている原因の一つでもあるだろう。


「人のスキルを奪う『スティール』。非人道的だよな、これって」


 ロイドの『スティール』は人のアイテムを奪う盗賊スキルではない。


 ロイドの『スティール』は、人が努力して手に入れたスキルを奪う悪役非道のスキルだ。


 ロイドは気に食わない奴や、逆らってきた奴にこの『スティール』を浴びせて、人のスキルを奪うという嫌がらせをして、ロイドに逆らう奴を黙らせてきた。


 そりゃあ、嫌われないわけがないよな。


 俺はそんなことを考えながら、ステータスの画面の下の方を見る。


すると、そこには次のような文字が表示されていた。



『以下、『スティール』で獲得したスキル』



 そして、そこにずらりと並ぶ多くのスキルを見て、俺は引くような声を漏らした。


「うわっ、ロイドのやつどれだけスキル奪ってたんだよ」


 そこに表示されていたのは、『剛盾』や『回復』など適性がないと持てないスキルや、『鑑定』や『調合』など冒険者から取った物とは思えないスキルたちだった。


 とてもじゃないが、人からこれだけのスキルを奪うことなんて俺にはできない。


「……でも待てよ。これって、転生先としてはかなりお得な物件なんじゃないか?」


 俺はロイドの悪役非道な行動に呆れながら、ふとそんな考えをしてしまったのだった。


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