第14話:もう大丈夫だから・・・。
日菜太と舞子が夕食を食べに来ていたレストランにロクデナシ和樹がやってきた。
客に迷惑がかかると思った日菜太は、ロクデナシ和樹を促してレストランの
外にでた。
ふたりの動向が気になった舞子も、ふたりのあとを追った。
「なんだよ、なんか文句あるのか?、ボンクラ息子」
「人が楽しく食事してる席に、ずかずか乗り込んできて失礼って思わないか? 」
「いいじゃねえかよ・・・俺の彼女に会いに来てなにが悪いんだよ」
「彼女?・・・舞子はもうおもえの彼女じゃない」
「舞子は僕の彼女だ・・・おまえに舞子の彼氏だって名乗る資格なんかないよ」
「舞子につきまとうのはやめろ!!そうじゃないと許さない」
「なにが許さないだよ・・・いちいちウザい野郎だな」
「ロクでなし和樹、ここで約束しろ、舞子に付きまとわないって」
「おまえになんか、言われたくねえわ」
ふたりのやりとりを舞子は、ハラハラしながら見ていた。
レストランの前を歩いてた人たちも何事?みたいに立ち止まって日菜太と
ロクデナシ和樹の様子を面白半分で見ていた。
「ボンクラ息子、お前こそ舐めた真似すると痛い目見るぞ」
そういうとロクでなし和樹は、服のポケットからナイフを取り出した。
取り出したナイフを日菜太の前でこれ見よがしに振り回した。
「まるでチンピラだな・・・ロクでなし」
「自信がないやつほど、そういうものに頼るんだ・・・」
「悪いことは言わないから今のうちにひっこめろ、おまえこそ痛い目を見るぞ」
「やかましい・・・怖いか、これが・・・」
「お前のために言ってるんだよ、ロクでなし和樹」
「やかましい!!」
そう口走るとロクでなし和樹は日菜太目がけでナイフを振り下ろした。
日菜太は襲ってきたロクでなし和樹の動きを、さして動くこともなく、
右に少し動いただけで難なくよけた。
よけるが早いかロクでなし和樹の手首を掴むのが早いか、日菜太は
ロクでなし和樹の手首を掴んだまま手前にひねり込んだ。
和樹が持っていたナイフが簡単に地面に落ちた。
「いててててて・・・・いたい、いたい・・・痛いって・・・」
「こら、離せ・・・離せよ・・・頼む、頼むから・・・離してくれ」
「和樹くん・・・こっちの手でナイフを持ってたんだから、こっちが
利腕だよね ・・・」
「もし手首が折れたら、どうする?」
「オナニーもできなくなるよ・・・困るよね」
「あのさ、提案だけど・・・手首、折られたくなかったら俺と舞子の前で誓え」
「二度と舞子には付きまといません、近づきませんって・・・」
「誓わないと手首が折れるぞ」
「分かった・・・分かったから」
「二度とあんたと舞子にはつきまとわねえ・・・・それでいいんだろ?」
「舞子じゃなくて舞子さん、だろ?」
「分かった、舞子さんには二度と近寄りません」
「絶対、守れよ・・・もし守れなかったら手首だけじゃすまくなるぞ」
「分かったな・・・・」
「分かった」
和樹が舞子に近づかないって誓ったから日菜太は和樹を放してやった。
和樹は負け惜しみの悪口雑言吐きながら逃げて行った。
合気道をやっていた日菜太に素人の和樹が敵うはずはなかった。
その一部始終を見ていた通りすがりの野次馬から拍手が上がった。
「舞子・・・もう大丈夫だよ」
「日菜太・・・日菜太・・・私・・・」
「舞子、もう・・・」
「泣かなくていいんだよ・・・ちゃんと片付いたんだから」
「私、心配で・・・どうなっちゃうのかと思って・・・」
「うん・・・びっくりしたよね・・・でももう大丈夫だからね」
「よかった日菜太に怪我がなくて・・・」
「言ってなかったけど、僕は子供の頃から合気道を習ってたからね」
「そうなの?・・・合気道なんて知らないし、かおりんのこともそうだけど、
他にもう私に隠してることない?」
「ん〜ないこともない・・・かも」
そう言って日菜太は、泣きじゃくってる舞子を優しく抱きしめた。
「もう大丈夫だから・・・泣かないで?」
そしたらまた野次馬から冷やかしの声があがった。
「さて、じゃ〜レストランに食事代払ってマンションへ帰ろう?、疲れたろ?」
日菜太は今夜はお酒を飲むつもりでいたから車はマンションに置いてきていた。
だからタクシーを拾って舞子と一緒にマンションへ帰った。
でもって、そんな、ハラハラするアクシデントがあった後は、燃えないわけ
ないんだ。
ふたりの気持ちは、ひとつ。
マンションの玄関を入るや否や、待ちきれないようキスからはじまった。
ベッドまでなんか行ってられないって感じで・・・。
結局、ふたりはソファーの上で、燃えまくった。
舞子は何回「もっと」って言葉と「ダメ」って言葉を言ったんだろう。
そのたび日菜太は舞子のために頑張ったわけで、結局舞子は何度昇天したかも
分からず放心状態のまま日菜太に抱っこされてベッドまで連れて行かれた。
そして、そのまま日菜太に添い寝してもらって朝まで爆睡した。
あくる朝、目を覚ました舞子は、今日まで生きてきて一番心地いい目覚めだと
思った。
昨日の余韻を引きずったままの舞子は、この朝もまた日菜太を求めた。
つづく。
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