第11話:やって来た女。

で、日菜太と舞子が同棲しはじめた高級マンション。

大学が休みの日、また誰かが日菜太の部屋のドアホンを鳴らしたやつがいた。


マンションのセキュリティーを物ともせず日菜太の部屋までやって来れる人物。


日菜太はもしかしてと思って、そっとドアを開けた。

そしたらいきなり


「やっほ〜日菜太〜・・・おっじゃま〜」


香乃かおりの・・・なにしに来た?」


「噂で日菜太に新しい彼女ができたってかじったから、どんな彼女か品定め・・・

見に来てやった」


「品定めってなんだよ」


「あがるね」


香乃は木之下と同じように自分ちの家みたいに、づけづけ部屋の中に入ってきた。

昼食の支度をしていた舞子は誰かが来たと思って台所から顔を出した。


「日菜太〜だれか来たの?」


で当然のように舞子とは香乃は鉢合わせになるわけで


舞子を見た香乃・・・開口一番。


「ん?・・・この人?日菜太の彼女って?・・・まじで?」

「・・・負けた・・・」

「日菜太の新しい彼女ってどんなブス女か見てやろうと思って来たのに」

「うそでしょ・・・めっちゃ綺麗な人「女」じゃん」


「あの・・・あなたは?」


「あ、私、香乃かおるの・・・はじめまして、え〜と・・・」


「私、生田 舞子いくた まいこです、よろしお願いします」


舞子は右手に包丁を持ったままペコッと頭を下げた。


「あ、よろしく・・・へ〜そうなんだ・・・」

「つうか合格だね・・・舞子さん、いい人っぽい」

「私、一目見てその人が、いい人かそうじゃないか分かるの」

「って言うか、舞子さん・・・似てるよね、一目見てそう思った」


「似てる?・・・私が?・・・誰にですか?」


「ねえ日菜太、舞子さんといつから付き合ってるの?」


「ピテカントロプスが地上に現れたころからだよ」


日菜太は木之下に言ったことと同じことを言った。


「それいつまで使うつもり?、くっだらないギャグ、そろそろ変えたら」

「あんたが女作るたびに何度も聞いたわ」


「じゃクロマニヨン人が地上に現れたころ・・・」


「舞子さん、日菜太って女たらしだから気をつけたほうがいいわよ」


「なにバカなこと言ってんだよ・・・いい加減なこと言うな」


「なんかさ、日菜太の彼女ちゃんが私より綺麗って許せないわね・・・ふたり

の中、ぶち壊したくなっちゃうのよね 」


「もういいだろ・・・用事がないんなら帰れ」


「舞子さん、せっかく知り合えたんだから、女同士仲良くしようね」

「日菜太を返せなんて言わないから・・・くすっ」


「あ・・・はい・・・って?、返せってどういう意味でしょう?」


「ああ、もうそれ以上ややこしくするな・・・とっとと帰れ」


「はいはい・・・帰るから・・・また来るね〜」

「舞子さん、またね・・・これからちょくちょくお邪魔するから・・・

仲良くしようね・・・おネエさん」


「日菜太、舞子さん泣かせるようなことしたら承知しないからね」


「そんなことしねえよ、人んちに来るなら土産くらい持ってこい!!」


ドタバタと香乃は捨て台詞を吐いて帰っていた。


部屋の中に静寂が戻ったところで舞子が言った。


「日菜太、今の人、誰?・・・まさかの元カノとか・・・?」

「日菜太を返せって・・・あれどう言う意味?」


「返せって言ったんじゃんくて、返せなんて言わないからって言ったの」


「そんなのどっちだっていいの、あの子、自分が日菜太の彼女だって

言ってるみたいじゃない」

「私の他に女がいたの?・・・あの香乃さんて人がそうなの?」

「そうなのね、私に隠してたの?・・・それって浮気だよ」


「それはおかしいだろ、もし香乃が先に俺の彼女だったら、あとから彼女に

なった舞子と俺が浮気してるってことになるだろ?」


「あ、そっか・・・私バカだね」


「あのね、舞子・・・またはやとちりしてる・・・ボケかまして・・・やっぱり

舞子は面白いな・・・退屈しないわ」

「よく聞いてね・・・香乃は俺の妹・・・「宝来 香乃ほうらい かおりの」それが俺の妹の名前・・・分かった? 」


「だって〜日菜太を返せって行ったじゃん 」


「返せなんて言わないからって言ったの」

「舞子は香乃にからかわれただけだよ・・・ 」

「妹だし、家族だからそう言ったんだって」

「まあ、妹がいるってこと言ってなかった僕も悪いんだけど・・・」


「あ〜・・・そうなの・・・なんだ妹さん?・・・あ、そうなんだ・・・あはは」

「って、なんでもっと早く妹がいるって言ってくれなかったのよ!!」

「もう、心臓に悪いよ」


「ほんとに舞子って面白い・・・まじ冗談通じない子だよね」


「面白くない・・・妹さんだったからよかったけど違う女だっから許さない

からね・・・って言うか、もしそんなことになったら慰謝料もらって出て

くから・・・」


「分かった、分かった・・・そんなにムキにならない・・・」

「おいで・・・驚かせた埋め合わせ、ちゃんとするから」


そう言って日菜太は舞子の後ろから彼女をハグした。


「しようよ・・・」


「まだ、お昼です」


賑やかにやって来て、わざと妹だって一言も言わなかった香乃。

まあ、舞子じゃなくても、ああいう状況じゃ勘違いしてもしょうがないだろうね。


つづく。


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