第10話:木之下君。
その日、日菜太が大学を休んだもんだから日菜太の様子を見に日菜太のダチが
マンションを訪ねてきた。
そいつは
金のために日菜太に近ずくようなことのない信頼できるであろう友人のひとり。
というのも木之下の家も、そこそこな金持ち。
だから日菜太の腰巾着には、なり下がらないのだ。
「おはよう、日菜太・・・俺・・・木之下だけど・・・」
「セキュリティー解除してくんない?」
木之下君が日菜太の部屋までやってきた。
「おう、
「つうか、おまえが大学休むなんて珍しいなって思ってさ」
「雨も止んだし、暇だったから様子見に来てやったぞ・・・」
「ほい・・・チーズケーキ」
「お〜すまんな、気使わせて」
「風邪でもひいて寝込んでるのかと思ったら、なんだよ元気そうじゃん・・・」
木之下はまるで自分んちの家でもあるかのように、ずけずけ部屋のなかに
上がり込んできた。
で、リビングまでやって来た武彦は、ソファーに座っている舞子を見つけて、
ちょっとばかり戸惑った。
舞子は木之下にちょこんとお辞儀して挨拶した。
「こんにちは」
「あ、こ、こんにちは」
「わ〜めちゃ美人・・・」
「あれま・・・そういうことか・・・日菜太」
「なにがそういうことだよ」
「おまえ、いつの間にこんな綺麗なおネエちゃん囲ってたんだよ」
「そりゃ〜大学になんて来る訳ないわな・・・」
「囲うってなんだよ、人聞きの悪い」
「彼女は
「お〜お、言ってくれるよな〜」
「で?おまえら、いつから付き合ってんの?」
「ピテカントロプズが地上に出現したころからだよ」
「へ〜ずいぶん昔からなんだな・・・」
「ねえ、おネエさんも・・・舞子さんだっけ・・・舞子さんも日菜太の金が
目当て?」
「なに、バカなこと言ってんだよ・・・失礼だろうが・・・余計なこと言って
部屋の空気汚すならとっとと帰れ」
「だって、おまえに寄って来る女なんて金目当てのやつばっかだからな・・・」
「舞子はそんな女じゃないよ」
〈高額報酬につられて彼女募集に応募してきたけどね〉
「いいから・・・武彦、今日はおまえと話してる暇なんかないんだよ、
だから帰ってくれないか?」
「ふ〜ん・・・まあ、お前がダウンしてなくてよかったわ」
「じゃあ、また来るから・・・おまえじゃなく舞子さんに会いに・・・」
「じゃ〜ね舞子さん、またね」
「はい、またいらっしゃい」
「日菜太は飽きっぽいやつだから、もし捨てられたら僕が彼氏に立候補します
から・・・予定入れといてください」
「ああ、逆か・・・日菜太が舞子さんに捨てられるってパターンだな」
「バカなこと言ってないで帰れ!!」
木之下は舞子を品定めするような眼差しをくれて、ニタニタ笑いながらへこへこ
帰って行った。
たぶん明日、大学中に舞子のことが知れ渡ってるに違いと日菜太は思った。
「ごめんな・・・がさつなやつで・・・」
「うん、気にしないから、おかげで少し元気出たかな」
「あいつのバカが舞子に感染したのかもな」
「そう言えば、思い出した・・・今更だけど舞子に高額報酬払ってなかったよな」
「高額報酬より高額な愛情もらってるからもういいよ」
「愛情もらってるのは俺のほうだと思うけど・・・高額報酬って聞いてさらに
元気出たかな〜舞子ちゃん」
そう言って日菜太は舞子の顔を覗き込んだ。
「もう、からかわない!!」
つづく。
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