第8話:舞子の失態。

一度、結ばれてしまえば、あとは関が切れた河川みたいに水が溢れ出す。

日菜太と舞子は週末会うたびに、当然のようにお互いを求めあった。

一週間が待ちきれないように・・・。


それが恋するもの同士の愛の確認と欲求の解消。


で、そんな日々の中、ちょっとした事件が勃発した。

事件というほどのことでもないんだが・・・。


それは舞子が勤める会社と取引先の会社との懇親会でのこと。

従業員はなるべく参加するようとの上司からの半強制。


意外と酒がいける舞子は、一も二もなく懇親会に参加することにした。

マンションにいて日菜太とラブラブするのは、少しあおずけしてたまにはハメを

はずしたかった。


その日は昼過ぎからずっと雨が降っていて寒くてうっとおしい日だった。


ご多分に洩れず、舞子は出てくるビールや酒を試飲するみたいに飲み倒した。

懇親会は宴もたけなわ。

取引先の男子とは初対面だったが、舞子はひときわ可愛いかったため若い男

どもの餌食になった。


勧められるままに酒を飲んで、上機嫌。

気持ちよくなってるところに持ってきて、その中の若い男が舞子に絡んできた。

でもって些細なことで舞子はその男と揉めて口論になった。

酒が入って気が大きくなってる舞子は、その若い男の言ったことが許せなくて

頭にきたあげくビールの空瓶で若い男の頭を思い切り殴ってしまった。


殴った男の頭から鮮血が・・・・。

頭って少し切れても血が大量に溢れ出るから大それた怪我をしたような

勘違いをする。


さすがに舞子も若い男の頭から溢れ出た血を見てビビって酔いが少し冷めた。

持っていたハンカチで、すぐに男の頭に当てたけど血はなかなか止まらない。

流れ出た血で男の顔は真っ赤に染まっていた。


「ごめんなさい・・・ごめんなさい」

「早く手当しなきゃ・・・そうだ救急車・・・」


結局、救急車は呼ばず若い男はそのまま同僚につれられて病院へ行った。

責任を感じた舞子も一緒に病院について行った。

もう懇親会どころじゃなかった。


病院の待合室で舞子は落ち込んでいた・・・お酒はダメだね・・・。

そうだ、お酒は人格を変える。

酒の上での失態、トラブルってよくあること。


舞子は思い出していた。

舞子の親戚のおじさんが自治会の旅行で観光地へ行った時、旅館の飲み会で、

客どうしが揉めて殴り合いの喧嘩になったのを義憤にかられた、おじさんが

喧嘩を止めようとして一方の男が持ってたナイフで腹を刺されて亡くなった

ことを・・・。

そのせいでせっかくの楽しい旅行が悲惨なことになった。


もし喧嘩を止めに入らなかったら、おじさんは死なずに済んだはずのに、

おじさんはまったくの無駄死にだった。

それも酒の上での出来事。


舞子はそのことを思い出していた。

そしてさらに思った・・・お酒はもう二度と飲まないと・・・。


つづく。

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