第4話:オーベルジュだよ、舞子さん。

「ホテルって?・・・」


「ホテルはホテルだよ」


「あの宝来ほうらいさんとお会いしてまだ二回目ですよ・・・」

「それでホテルって早くないですか?」


「え?・・・・ダメなの?」


「私、そういうつもりで応募したわけじゃないですから」


「それはないでしょ?、舞子さん」


「宝来さん・・・最初っから私の体が目的だったんですか?」


「なに言ってんの?」


「もし、そういうことなら私、辞退させていただきます」


「辞退って・・・」

「・・・・・くっ・・くっ・・・あはは、まじで?」


「なにが可笑しいんですか・・・」


「舞子さん、めっちゃはやとちりしてる・・・」


「はやとちり?」


「あのさ、俺の言い方も悪かったけど・・・ホテルって言うのはオーベルジュだよ」


「え?オーベルジュ?」


「オーベルジュってのは郊外にあって食事がメインのホテル付きのレストランの

ことだよ」


「今から、そこに舞子さんを連れて昼食を食べに行こうと思ってるんだけど・・・」


「え?・・・ホテルにエッチしに行くんじゃ?」


「あはは・・・なに言ってるの、舞子さん」

「舞子さん、面白すぎ・・・ますます気に入ったな、俺」


舞子は一人で騒いで、はやとちりした自分がめちゃ恥ずかしかった。


駅前の駐車場に停めてある日菜太の車は舞子でも分かる、いかにも走りそうな

真っ白なボディのスポーツカーだった。


「なんだかカッコいいんですけど、この車」


「B◯WのZ◯って車だよ・・・中古車だけどね・・・僕ってあまり車には興味

ないんだけど、今日みたいな日には必要だからね・・・」


車に興味ないのに車持ってるの?、金持ちは違うって舞子は思った。


日菜太はB◯Wの助手席に舞子を乗せて郊外の「レボショワール」 という

フランス料理のオーベルジュに昼食を食べにいった。

レボショワールは蔦の絡まった、感じのいいレストランだった。


日菜太にエスコートされてレストランのテーブルについた舞子は、珍しそうに

店内を見渡した。


「宝来さん・・・なんだか高そうなレストランなんですけど・・・」

「いいんでしょうか?」


「舞子さん、デートのたびにここに来るわけじゃないからね・・・今日は

記念すべき初デートなんだからね、そのお祝い」

「好きなもの注文していいから・・・」


舞子はメニューを見た・・・でも全部フランス語で書かれていてチンプンカンプン。


「あの、私、こんな高級レストラン入ったことないからメニュー見ても分かんない

んですけど・・」


「じゃ僕に任せてくれる?」


そうい言って日菜太はギャルソンを呼ぶとテキパキ料理とワインを注文した。


「すごいですね宝来さん・・・」


「舞子さんも来るようになったらすぐに覚えるよ」


しばらくすると舞子の見たことない料理がテーブルに次々出てきた。

年代物の美味しいワインも・・・


舞子は食べたことない料理にテンション爆あがり、運ばれてくる料理パクパク

ワインガブガブ。


日菜太にまた笑われた。


「ごめんなさい・・・私、下品だった?」


「俺はね、ご飯を美味しそう〜に食べる人好きだよ」

「ほんとに舞子さんは面白い」

「君といると飽きないわ・・・」


「私、なにもしてませんけど・・・」


「いいの・・・君はそれで、そのままでいいんだよ」


日菜太は飾らない舞子が気に入った。


「あ〜お腹いっぱい・・・美味しかったです」


舞子は、デザートも含め全食平らげた。


「それはよかった・・・じゃ〜もういいね・・・出ようか?」


日菜太にそう言われて舞子は席から立ち上がろうとして、よろめいた。


「舞子さん、大丈夫?」


「なんか・・・ワイン飲みすぎたみたい」


「そう・・・じゃあ少し休憩して帰ろうか・・・」

「俺、部屋予約してくるから・・・舞子さんは椅子に座って待ってて」


「あ、私、大丈夫ですから・・・」


舞子が言い終わらないうちに日菜太はフロントに部屋をオーダーしに行って

しまった。


「え?まさかお泊まり?」


しばらくして日菜太が舞子の元に帰ってきた。


「部屋取れたから・・・」


「あの、お泊まりするんですか?」


「まあ、場合によってはね、舞子さん次第・・・」


「やっぱりそうなるの?」


もし、万が一なにかあっても舞子はかたくなに拒むするつもりだった。

考えすぎのように思えるけど・・・。


つづく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る