06

 体温が下がっていく。

 指先が冷えていく。

 心から、色が消えていく。

 考えれば考えるほど、考えないようにしようとすればするほど、心の中にどす黒い雲が広がっていく。

 全部全部、私が悪い。私が。私が。私が。

 自分を責める気持ちが大きくなって、私の心を押しつぶす。

――あの時私が、書きたいなんて思わなければ。

 ちゃんと夢を諦めて、小説書くのを、やめていれば。


 ああ、そうか、と思った。



 私は、愛してなかったんだ。

 自分で書いた小説を、世界を、皆を。

 好きだから書いたんじゃない、私のただの自己満足。

 だったら、もう。



 こんな世界は、もう。



「消えろ……!」


 心の底からの叫びを、吐き出した瞬間。

 ぐらりと、地面が揺れ動いた。

 ものすごい勢いで、空に暗雲が広がっていく。

 すぐ傍で、大きな木が地響きとともに倒れる。

 大粒の重たい雨が、私をめがけて降り注いだ。

 髪に、顔に、雨粒が流れて、服が水を吸って、体が冷えきって。

 私の荒い呼吸音と、ドクドクと脈打つ心音だけが、耳の奥でこだましていた。

 消えろ。消えろ。消えろ。

 一人ぼっちの暗闇の中で、ただそれだけを、願い続けた。

 消えろ。

 消えろ。

 もう、いいから。

 ぜんぶ、どうでもいいから。

 消――――


「ヒロイ!」


 そのとき、ふいに。

 暗闇を切り裂いて、一筋の声が、私の世界に飛び込んだ。

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