05
辿り着いたのは、公園だった。
小さかった頃、私はいつも友達とここで遊んでいて。
ここから私の想像が生まれた。
一番ワクワクする場所だ。
だからここにいたら、私の心の宝石が輝くはず。
そしてダイヤモンドたちは、心の宝石の場所がわかるレーダーを持ってるから、きっと私を見つけてくれる。
そうしたら、私は――
「み~つけた!」
ハッと我に返って、顔を上げる。
公園の入り口に、びしっとこちらを指さす、ダイヤモンドがいた。
「ダイヤモンド!」
「んー、なになに、私の名前知ってるの? うれし~! ねえサファイア、聞いた!? 私有名人!」
「あなたの素行が悪いから悪名が知れ渡ってるだけだと思いますわ」
「僕、早く帰りたいんだけど」
「ノリ悪いぜエメラルド! 宝石
「ルビーはいつも野蛮ですね」
皆、いた。
私がいつも書いてた皆と、少しも変わらない。楽しそうで、遠慮も我慢も噓も知らなくて。
いつだって、自分のやりたいことを一番大事にする。
そんな、海賊たちだ。
「み、皆……! 皆は、心の宝石とったらワクワクした気持ちが消えちゃうって、知らなかったんだよね? わざとじゃ……わざとじゃないんでしょ?」
「えっ、うそ! そうなの!?」
ダイヤモンドが目を見開いた。
「私、宝石集めて願いを叶えたいだけで……どうしよう、返してこなきゃ。協力してくれる?」
ダイヤモンドにぎゅっと手を握られ、心臓が大きく跳ねる。
あったかい温度。可愛い声。
ダイヤモンドが、存在してる。
私を、冒険の仲間に入れてくれる。
すごく、ドキドキしてきて。ワクワクしてきて。嬉しくて。
私は、ダイヤモンドの手を握り返した。
「うん。うんっ! 私は」
刹那。
ぷつっと何かが切れたような、音がした。
胸の中から、なにかすごくキラキラしたものがするりと抜き取られて、空っぽになってしまうみたいな。
ダイヤモンドが、満面の笑顔を浮かべる。
「はぁ~い、宝石いただきー。これで五百二十六個目だね」
その手の中に、大きな宝石。
でも、世界が色褪せてしまって、全然綺麗に見えなかった。
私の心から、大切なものが消えちゃってる。
「だ、ダイヤモンド……? なんで、だって」
「最高の宝石をとるためなら、嘘だってなんだってつくよ。だって私」
ダイヤモンドが、にっこり笑った。
私の知らない、笑顔だ。
「子どもの心とか、どうでもいいもん」
「っ……!」
砕け散った。
砕かれて、踏み潰されて、突き刺されて、粉々になる。
だって。
だって。
――だって。
「海賊を信じるものじゃないですわ」
ダイヤモンドの背後で、サファイアも不敵に微笑む。
「終わったなら行きますよ、ダイヤモンド。まだ宝石を奪れていない子どもたちが大勢いるでしょう。僕が見る限りでは、空の状態が今完璧です」
「えー、まだ行くの? あーめんどくさい、すべてがめんどくさい」
「ナヨナヨすんなエメラルド、盛りさがるだろうが!」
やいやい言い合いながら、皆の姿が公園から消える。
私はその場に立ち尽くしたまま、動けなかった。
目の前が真っ暗になって、何も考えられなかった。
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