第53話 週末のイベント
土曜日の電車に乗るといつもと違う感じでそわそわした。通勤の時間帯に会社に行くのでも遊びに行くのでもない、そんなことが新鮮だった。そもそも土曜は通勤の人が減るから、いつもよりは人が少ないけれど、ところどころに遊びに行く人がいて、にぎやかだからか電車内の空気もゆったりだ。イベント会場は会社に近い大きな公園…昔、山下さんと出かけたことがある思い出の場所だった。
「おはよう」
改札を出ると、渉と椿が待っていた。
「おはよう、遅かった?ごめん」
「ううん、なんとなく落ち着かないから早めに来た」
「俺も」
「わかる、仕事なのに会社行かないのって変な感じだよね」
3人でイベントブースになる広場に着くと亀井先輩達がもう準備を始めていた。
「おはようございます」
「おはよう、早いな、集合時間まだだろ」
「なんか落ち着かなくて」
「遠足前の小学生か」
「何したらいいですか?」
「とりあえず会場設営の手伝いしてくれるか、石木、向こうでテント立ててるから手伝ってやって」
「はい」
「久高、本田は、向こうに西田がいるから、指示してもらって」
「はい」
「ねぇ雫、みんな服装が違うから変な感じだね」
今日は動きやすい服装でと言われていたので背広を見慣れてる先輩達のカジュアルな服装に目がいく。
「そうだね」
「佐藤先輩の格好好きかも〜山下さんの感じもいいよね」
「そう?亀井先輩も素敵だと思うけど」
「まあ、いいんじゃない」
「素直じゃないなー」
「そんなことないけど、それよりアレはないでしょ」
「アレ?」
「あの女さ、動きやすい服装の意味わかってるのかな」
椿の目線の先にいる白石さんの服装に違和感を感じてるのは椿だけじゃないだろう。今回は服装の指示があり、男女ともパンツやジーンズが多い中、タイトなミニのスカートにヒールで現れた白石さんに誰もが驚いていた。
「白石、その格好…」
「はい?亀井さん何ですか?」
「今日の服装の指示聞いてたか?」
「はい、動きやすい服装ですよね」
「で、それ?」
「これが一番動きやすいですけど」
「ああ、うん…そうかってならないだろ」
「大丈夫ですよ、それに少しは華がないと」
「今日はそういうのじゃないだろ」
亀井先輩の言葉にめげない白石さんにある意味感動すら覚えた。
「何にも懲りてないね」
会場設営が終わって、椿と私で来場者に渡す記念品のチェックをするために受付の後ろで作業してた。
「椿、声大きい」
「いいよ、聞こえても」
「椿、ケンカしないでね」
「約束はできないなー」
「もう」
開場の時間が近づいて、決められた場所にそれぞれ移動しようとした時、受付に1人の男の人が現れた。
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