第40話 白石さん再登場

「NYに行く前に別れた彼女だろ?俺らも紹介されてないよな?」

「ああ、やっと告白できたって大喜びしてたのに、よほど大事にしてたのか中々紹介してくれなくて、急にNY行きが決まって別れたって…」

 黙ったままの山下さんと、話の内容にどんどん青くなる雫が心配で仕方なかった。

 

「別れを切り出したのって山下さんですか?」

 これ以上は無理と話をなんとか変えようとしたのに本田が核心を突いてきた。


「俺が……振ったんだよ」

「いや待てって、なんでお前が振ったのにつらそうなんだよ。しかも忘れられないって矛盾してないか?」

 酔っているのか食い気味の亀井先輩がそう言うと本田が同調して言葉を重ねる。

「そうですよ…忘れられないって…なんで振ったんですか?」

 

「……恋人より仕事を選んだってことですよね…?」

 重い空気の中、消え入りそうな声で雫が言葉を発したことに俺も含めて、みんなが驚いた。

「久高?だいぶ酔った?マスターごめん、お水もらえる?」

 顔色が悪いことに気づいた佐藤先輩が水を雫に渡そうとしたとき、テーブルの上に置いてあった佐藤先輩のスマホが振動し始めた。白石さんを送っていった川岸さんからの電話で、白石さんが3次会に行くと駄々をこねて途中でタクシーを止めてしまったらしい。仕方ないので住所と店の名前を告げると、10分もしないうちに元気な白石さんとげんなりした川岸さんがあらわれた。

「悪かったな川岸」

「…じゃあ俺これで」

「一杯飲んでいかないか?」

「ありがとうございます、でも…また今度おごってください」

 そう言うと、頭を下げて帰ってしまった。

「もう、佐藤さんも山下さんもずるい!私を置いて行くなんて」

 佐藤先輩の隣に座ってた雫に無言の圧をかけて白石さんが2人の間に座る。

「なんで白石隣に座ってんの」

「だって久高さんが席空けてくれたから」

「圧かけてましたけど?」

「本田さん、何か言った?」

「いーえ」

「まあまあ、ケンカすんなって、白石なに飲む?」

 亀井先輩が気を使って、優しく聞く。

「あー、佐藤さんはなに飲んでるんですか?」

「ウィスキー、ロック」

「ふーん、あっ、そのカクテル色きれい!それは?」

「赤いのはレッドアイでミントの葉が入ってるのはモヒートです、何になさいますか?」

 マスターが答えながら水とおしぼりを持ってきたくれた。


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