第39話 レッドアイって知ってる?

「久高、グラス空いてる、おかわり何にする?カクテルとかもできるよ」

 亀井先輩が置いてあったメニューを雫に手渡した。雫が何にしようか悩んでるとマスターが何種類かのお酒をすすめてくれる。

「レッドアイとかはどう?赤くてきれいだよ」

「じゃあ、それで」「私も」

 マスターがすすめてくれたカクテルを椿と雫が頼もうとした時だった。

「それトマトジュース入るけど大丈夫?」

 静かだった山下さんがちらっと雫を見て、2人に聞いてきた。

「私、トマトジュース大丈夫です!あれ、でも雫は?」

 本田が雫の顔を見た。

「…えっ、あ…私は違うのにしようかな…」

「あれトマトジュース苦手かな?」

「…ええ、トマトジュースだけ飲めないんです」

 マスターの問いにバツが悪そうに雫が答える。

「そうか、それならレッドアイと、もう一つは僕のおすすめ作るね。トマトジュース以外に苦手はない?」

「はい、大丈夫です」

「他の人はおかわりどうですか?」

 みんなにおかわりの有無を聞いて、マスターが手際よくお酒を作る音が聞こえ始めた。


「雫がトマトジュース苦手なのって、ちょっと意外だな」

「そうかな?」

「確かにあんまり苦手なさそうだし、美容のためとかで飲んでそうだよな」

「あー、…昔からだめで…トマトは食べれるけど、トマトジュースがほんとに無理なんです」

「でも山、トマトジュースが苦手かもって…それ勘?」

 亀井先輩がなんの気なしに山下さんに聞く。

「…いや、昔トマトジュースが苦手って言う子知ってたから…知らないとあれかなって思って…」

 取り繕うような言い訳が自然に見えなかったのか、佐藤先輩がニヤニヤしながら聞く。

「もしかして、それって…忘れられない元カノ?」

 意図したわけじゃないのに終わったはずの話が復活していて、関係ないはずの俺が無駄に焦ってると、ボマー本田がそれに乗っかってしまった。

「えっ、えっ、山下さん、忘れられない人がいるんですか?」

「…あ、いや…」

 話を振られた本田に目をやった後、一瞬、雫を見て目を伏せた。


 

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