第37話 本田の爆弾その2

 やっと乾杯をして、出されたおつまみに手を伸ばした本田が今度は佐藤先輩に爆弾を放った。

「でも白石さんって佐藤さんのことも好きですよね?」

「ゴホッ…お前…ド直球って言うより、それデッドボールな」

「ハハハ、久高、本田が武史に絡んでるから助けてやれよ」

「えっ、亀井先輩が助けてあげてくださいよ」

「こいつ俺の言うこと聞かないんだよ…でも、まぁ本田の言うことは当たってるけどな」

「亀井先輩!?」「おい!」

「ほらー、やっぱり!!そうだと思った!ほら雫、私の勘当たるでしょ!!」

「椿…みんなびっくりしてるから…」

「いや、ほらびっくりって言うよりは、うん、なんか…」

 なんて言っていいか悩みながら答える。

「わかってるよな、武史?」

 ハイボールを口にした亀井先輩が佐藤先輩に目配せした。

「うーん?白石さんに告白でもされました?」

「いや、ホントお前はオブラートに包めないよなー。俺の教育が悪かった」

「だって、そんな勉強なかったですもーん。白石さん振ったんですか?」

 佐藤先輩が雫を一瞬見て、大きくため息をついた。

「はっきりと言われたのは、あいつがいろいろあった時で…でも俺はそんな気全然なかったし、辛くて誰かを頼りたかったんだと思ってさ」

「武史の判断は間違ってないと思うよ」

「振られた白石さんはどうしたんですか?」

「えー、あー、うん…諦めませんって言われたような気がする。あれから時間経ってるし、てっきり山に鞍替えしたんだと思ってたけど違った?」

 佐藤先輩が山下さんの顔を見るとわかりやすく知らんふりをした。

「…なんか佐藤先輩の言ってた白石さんのイメージとだいぶ違う気するんですけど」

「それな、俺も前に武史の下にいた時のイメージと違ってたから、まあまあ驚いてる」

 亀井先輩も俺たちと同じことを思ってた。

「…それは、俺も思ってた…なんか雰囲気違うなって」

 佐藤先輩がぼそっと言うと山下さんがロックのグラスに手をかけた。

「あれが白石のホントだよ。多分武史や文哉が見てたのは猫かぶってた白石だから、裏の顔に気が付かなかったんじゃないかな」

「「えっ!?」」

 その場にいた全員が声をあげた。

「山、それ本気で言ってる?」

「武史には悪いけど本気で言ってるし、本当のことだよ」

「でもあいつはいろいろ辛い思いして…」

「そうだよな…本社の女子から…」

「それも実はちょっと違ってたみたいだけど…」

「「はっ!?」」

 佐藤先輩と亀井先輩2人が抜けた声をだす。ついさっき聞いた白石さんのことが真実味を帯びてきた。

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