第36話 本田の爆弾その1

 3次会に残った佐藤先輩たち同期3人と俺達同期3人で亀井先輩のお友達のお店におじゃますることになった。10人も入れば、いっぱいになるこじんまりしたバーで居心地の良い雰囲気と笑顔のマスターが迎えてくれた。

「急に悪かったな」

 カウンターの前のテーブルに座ると亀井先輩がマスターに声をかけた。

「いいよいいよ。今日は、さっきまで貸し切りにしてて、閉めようかと思ってたから人いなかったし全然OK」

 俺達だけの貸し切りに恐縮してると、そんなことはお構いなしの本田が声をあげた。

「美味しいお酒が飲みたいです!」

「はいはい、何でも言って作るよ〜」

 それぞれの注文を終えるとマスターを手伝うと言って、亀井先輩がカウンターに消えた。

 

「山のお別れ会の最後もここだったよな」

「ああ」

「あの時はみんなベロベロに酔っ払って大変だったよな」

「そうっだったか?」

「お前が1番酷かっただろ」

「忘れたよ」

 2人の会話に本田が爆弾を投げ込んだ。

「それで…山下さん、彼女いるんですか?」

「本田、お前直球すぎないか?」

 乾杯どころかお酒も出てない状態でそんな質問されると思ってなかったのか山下さんも驚いてる。

「…いないよ」

「ふーん、白石さん彼女じゃないんですね」

「なんで白石?」

「この間、他の部署の女の子が山下さんのこと聞きに来て、白石さんが彼女みたいな口ぶりで答えてたから、てっきり…」

「まぁ支社に若いやつ少ないから、他の人よりは知ってると言えば知ってると思うけど」

「ふーん、そうなんですね」

 納得したのかどうかもわからない本田の返事の後、マスターと亀井先輩がみんなのお酒を持ってきてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る