第32話 勘違いな白石さん
「なになに、楽しそー、私も仲間に入れて」
戻ってきた白石さんが山下さんの隣に座ったタイミングで「誰か一緒に歌おー」と呼ぶ女性の先輩の声に雫がハイと手を上げた。
雫が本田を連れてステージに立つと先輩と3人で女性アイドルの歌を歌い始めた。山下さんの隣を陣どっていた白石さんのスマホが急ににぎやかに鳴って、画面を見てあわてて部屋を出ていった。
「文哉、何の話だった?」
「久高の忘れられないって話」
「ああ…」
一瞬苦い顔をした佐藤先輩と、同じくらい苦い顔をした山下さんがお酒をぐっと飲み干した。
「お前もいい加減、自分の気持ち自覚しろよ」
亀井先輩の視線が佐藤先輩に向く。
「手強い元彼忘れないと俺の出番はないな…」
「…元彼って…」
「なに山下も気になる?久高の元彼」
「いや、そういうわけじゃ…」
「まあ、いい子だからわかるよ。社内でも人気あるから」
3人が同時に雫達が歌っている方を見た。
「急に振られて…理由もわからずにずるいよな…そいつに縛られたまんま…」
「それぐらい好きだったってことなんだろうけど…可愛そうだよな」
「武史…?」
「その元彼に会ってみたいよ…」
「えー、誰の元カレですか〜?」
スマホを手に戻ってきた白石さんがそう言うと3人共口をつぐんでしまった。
「もしかして…私の元カレの話ですか?」
「いや、別に」
亀井先輩の冷たい返しを無視して白石さんが話す。
「そんな聞かれたらちゃんと答えるのに…まぁ、普通の人ですよ…佐藤さんや山下さんに比べたら…フフ」
笑顔で答える白石さんは、誰の視線も自分に来ていないことにきづいてない。
「顔もそれほどでもなかったし、強いて言えばお金持ちってことぐらい」
周りにいた男性を全て敵にまわすセリフでスラスラ答えてる時、二人が戻ってきた。
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