第29話 本田が白石さんを嫌う理由
山下さんと白石さんを見て、様子のおかしい雫、何があったか聞いてないけど、顔を見れば山下さんがただの先輩でないことは確かだった。佐藤先輩に気づかれそうになって、あわててごまかしたけど状況が好転したわけではなかった。
「新人は参加で」
課長のパワハラとも取れるセリフで俺達の2次会への参加は確定していた。部長も参加の時点で他の人たちもほぼ参加になった。
「私の元彼さ、白石さんみたいな子にあっさり持ってかれたんだ」
白石さんを見ながら酔ってる本田がぼそっとつぶやいた。
「椿…元彼ってずっと付き合ってて入社してすぐにだめになったって言ってた?」
「うん、会社の同期入社の女の子がほっとけないって」
「うん」
「はじめは付き合ってる彼氏の相談に乗ってあげてたみたいで…私達お互い忙しかったから会う回数は減ってたんだけど、その子の話がよく出てたんだ」
「うん」
「久しぶりにデートした時、偶然その子と会ってね、一緒にコーヒーでもって」
「久しぶりのデートなのに?」
「なんかおかしいなーって…2人の距離があまりにも近くて…その時気づけば良かったんだけどね。…絵に描いたような綺麗な女の子でさ、女の子女の子してて、モテるんだろうなって思った」
「うん」
「ある日、会社休んだって連絡来たから、半休とってアパート行ったら、その女の子が看病してて」
「えっ、それって」
「彼氏は、ボーっとしながら違うって言うし、女の方は私が好きなだけだからって泣き出すし、アホらしくて帰った」
「怒れば良かったのに」
「体調が悪いのにそれ以上言えないでしょ…で治ってから会ったら…」
「…?」
「お前は一人でも大丈夫だけど、彼女は俺がいないとって…ほっとけないんだって…」
「ひどい…」
「元彼にはそう見えるってことは、私は2番目になっちゃったんだよね…言われて気づいた」
「…椿…辛かったね」
雫が大きく手を広げると本田が胸に飛び込んで大きな声で泣き出した。
「…どうした?…本田?」
手配を終えた亀井先輩が泣いている本田を見て驚いてる。
「後で話聞いてやるから、とりあえず移動な」
本田の頭に手を置いて、優しくポンポンと2回置くと部長のところへ行ってしまった。
「優しいね亀井先輩」
「いつもあれぐらい優しいといいのに」
「もう、そんなこと言って、嬉しいんでしょ」
雫が本田の背中を思いっきり叩く。
「わたるー、雫がひどい」
「はいはい俺んとこ来るか?」
俺が大げさに手を広げると
「やだ、雫がいい」
また雫に抱きついて離れなかった。
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