第26話 金曜の親睦会
「だから言ったじゃん、くせ者だって」
椿が笑いながら、大きなジョッキを持ち上げる。部長の挨拶と課長の乾杯で始まった親睦会という名の飲み会は、賑わっていた。部長の席の近くに山下さん、白石さん、佐藤先輩が座って、入口近くの席に幹事の亀井先輩と新人3人が揃った。
「亀井先輩も部長の近くに座れば…」
「いや、俺今日幹事だし、白石苦手なんだわ」
「えっ!?」
驚いた声が3人からでた。
「それって、どうしてか聞いてもいいですか?」
「お前らも、何となく近くにいたらわかるだろ、あいつ山下と佐藤狙いなのか、俺のこと完璧無視でさ、仕事中は気にならないけど、飲むときまで関わるのごめんだわ。お前らと話してるほうがよっぽど楽しいし」
そう言って、渉と楽しそうに飲みはじめた。椿が2杯目のビールを頼むために店員さんを呼ぶブザーを押すと大きな声をあげた。
「飲み物頼む方いますかー」
率先して、注文を受ける椿を亀井先輩がニコニコしながら見てる。
「先輩、椿が可愛くて仕方ない!って顔してますよ」
「まあ、文句ばっか言ってたやつが気を使うことを覚えると、さすがに嬉しいよ。育てた甲斐があるってもんだろ」
声が聞こえたのか椿が振り返った。
「育ててもらった覚えはございません」
深々と頭を下げる姿に、私も渉も亀井先輩も大笑いする。
「やっぱり、いいコンビですね」
「俺もそう思うわ、本田は裏がないからやりやすいよ…でもあいつは裏だらけかもな…」
「あいつって…」
「まあ、山下はわかってると思うけど、武史はどうかな…白石に落ちることはないと思うけど…」
私の方を見て、意味ありげに亀井先輩が笑う。
部長が注文したワインのボトルが来て、2回目の乾杯をするころには、みんなかなり出来上がっていた。白石さんが山下さんに腕を絡めながら、佐藤先輩にもたれかかるという力技にでていた。
「なんかやばいかも」
金曜のせいか、亀井先輩の飲むペースが早くて、つられて同じペースで飲んでることに気づいて、あわててそばにあった水を一気飲みした。その水が雫の水でいよいよ酔ってる自分に焦って、席を立つ。
「私もお手洗い行こっかな」
2人で席を立って、お手洗いに行く雫と別れて、少しだけ空気を吸いに店の外に出た。少しして席に戻ると雫と山下さんの席が空いていた。
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