第25話 女の勘大当たりかも
本田の"女の勘"を聞いて、片岡さんの言葉を思い出した。会ってみて特に嫌な感じを受けなかったけど…なんてことを思っていたが妙に鼻が利く本田の勘がズバリ当たるとはこの時微塵も思っていなかった。
午後から割り振られたチームは、佐藤先輩の方に雫と本田、山下さんの方に俺と白石さんで、愛嬌たっぷりに"よろしくね"とウィンクされて驚いた。
山下さんは、誰に対しても丁寧で、柔らかい雰囲気で接してくれる人だった。時折、ジョークも交えて場の雰囲気を和ませて、好感度は完璧だった。
近い場所でいると、山下さんの視線が誰かを探していることに気付く。そばにいなければ、わからないほど自然に探しているのは雫で間違いないだろう。
「ねぇ、石木くん、佐藤さんって彼女できた?」
「えっ!?あっ、いや、わかんないですけど…」
いつの間にか、隣にあらわれた白石さんが小声で聞いてきた。
「私がいた時に別れて、ずっといなかったんだけど…そっか、知らないかー。女の子なら知ってる?久高さんとか本田さんとか?」
「いや、あいつらも知らないと思いますよ。そんな噂聞いたことないっすから」
「フフ、なら大丈夫かな。うん、ありがとう」
意味ありげな笑みに少し怖さを感じつつも、仕事が始まるとそんなことを聞かれたことすら忘れてしまっていた。
プロジェクトチームの他の人たちは、自分の業務と同時進行だからか、佐藤先輩や山下さんと俺達新人で動くことが必然的に多くなっていた。重要な仕事の割り振りも亀井さんが完璧にしていて、プロジェクトは順調に滑り出していた。
プロジェクトが始まって1週間、金曜の朝一番に部長が顔を出した。部長主催のプロジェクト親睦会を急遽すると言い出して、亀井先輩が幹事を任されることになった。
「当日に夜の予約なんて…無理」
椿と2人で亀井先輩に渡されたお店のリストに電話をかけていた。
「まぁまぁ仕方ないよ、部長の突然の思いつきはいつもらしいし…でもあの短時間でこれだけのお店ピックアップできる亀井先輩がすごすぎるよ。できるって聞いてたけど、オンもオフもできそうだね」
「オンも…オフも…って怖すぎる!」
リストのお店は料理が美味しいと評判のところばかりだった。部長と課長を入れて16人、4件目の電話でなんとか予約が取れて、ホッとしてると白石さんが私達の前に立っていた。
「久高さん、ちょっといい?」
「えっ、あっ、はい」
あわてて、立ち上がろうとすると椿が制止した。
「何の用件でしょうか?ここで聞きます」
「本田さん、そんな、怖い顔しないでよ。ちょっと聞きたいことがあっただけ…佐藤さんって、彼女いないよね?」
「はっ?」「えっ?」
「だから、彼女!いないよね?」
「多分…いないと思います…でもファンはたくさん…」
「ああ、それは知ってる、佐藤さんに群がってるおばさん達ね」
「へっ!?」
椿も私も言葉を失った。佐藤先輩の言っていた白石さんのイメージが崩れた瞬間だった。
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