第24話 女の勘は侮れないかも

 佐藤先輩たち3人と白石さんが会議室に移って、各々自分の席に戻ると、椿が私の目の前に立っていた。

「雫?後でゆっくり話そうね?」

「…あとで俺とも話そうな?」

「えっ…うん…」

 いつになく真面目な顔の椿と笑顔の渉に嫌とは言えず返事をする。それからのことはあんまり覚えていなくて…いつもなら1時間で終わる入力の仕事を終えると昼休憩の時間になっていた。


「雫、ランチ行こ?」

 椿が財布とスマホを手にあらわれると渉も席を立つ。佐藤先輩達がでてくる前に出ないとと思うタイミングで会議室のドアが開いた。

「あー、やっとお昼だ。佐藤さんランチ行きましょう!山下さんも!」

「俺スルーするのやめてくれる?」

「あっ、いや、亀井さんもどうですか?」

 白石さんのにぎやかな声が聞こえてる中、急いで外に出ようとした時だった。

「久高、石木、本田もお昼一緒に行くか?」

 佐藤さんの誘いをどう断ればいいのか、わからないまま焦っていると椿が代わりに答える。

「今日はちょっと同期の集まりの打ち合わせなんでまた誘ってください!」

「そうか、じゃあまた今度な。文哉どこにする?山も白石も久々だから和食にするか?」

 部屋をでていく4人を見送って、1番会社から近いパスタのお店に入った。

「雫、話して!」

「えっ…話してって…」

 注文してすぐに椿が聞いてきた。

「本田、そんないきなり…聞き方変だろ」

「だって、雫の態度がおかしいのはわかったけど、なんでかまではわかんない」

 椿の言葉に緊張が解けて笑ってしまった。

「ハハハ…椿、うん、ありがとう」

 ゆるんだ私の表情を見て、椿も渉も笑顔になる。

「佐藤さんとケンカした?それともうちの亀が失礼なこと言った?あとの2人は今日が初対面だよね?」

 椿の問いになんて答えればいいんだろう…私のことを気遣ってくれる2人に嘘はつきたくないけど、自分でも消化しきれてない感情を言葉にするのは難しかった。

「雫?話したくないなら、無理には聞かないけど…俺も本田もいるからね?気持ち溜め込まないように!佐藤先輩も言ってただろ?」

「あの…えーと、話したくないってわけじゃないんだ。山下さん…同じ大学のゼミの先輩なんだ…」

「でも、かなり上だよね?」

「うん、学年はかぶってないんだけど、共通の知り合いがいて…突然あらわれたから驚いただけ…」

「ふーん、そっかー、確かにあんな男前突然来たら驚くわ」

 納得したのかわからない返事の椿と、納得はしてないけど、それ以上聞いてこない渉との会話は注文してきたパスタが来て終わった。


 食べ終えて、食後のドリンクが来ると椿が話し出す。

「ところでさ、あの白石さんって、ちょっとクセあるよね?」

「なに、それ。なんでそう思うんだよ」

「いや女の勘!」

「なんだよ、根拠なしかよ。お前女の勘鋭かったっけ?」

「うん、くせ者にだけ」

「くせ者にだけなんだ…椿、面白すぎ」

「ホントだよ~しかもまぁまぁ当たるんだな、これが」

「いや、それがほんとなら怖いかも」

「うん、怖い~」

 気付くと休憩が終わる時間で、あわてて会社に戻った。

 

 




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