第17話 距離の縮め方
「そっかー、良かったー。じゃあ、俺頑張ってもいいよね」
「へっ?」「えっ?」
「よし、久高ちゃん、この後ご飯行こ!」
「へっ?」「えっ?」
「って言うか、2人でシンクロしすぎ」
「ご飯って…私とですか…?」
何をもって私と…?
「そう!…俺と行くの嫌?」
首をかしげて、寂しそうに言われると、NOと言えなくて…困ってしまった。
「先輩、急すぎでしょ。久高困ってますよ」
「それはわかるけどね、俺も頻繁に来れるわけじゃないからさ…だって、あれから、集いにも顔出さないし」
「集いって、OBのっすか?」
「うん」
「久高行ったの?」
「あれは先輩に頼まれて代役だったんです…すみません」
「いや…そうだよね…ゼミ決めで悩んでるってことは1年でしょ…集いは3、4年優先だったよね」
「久高、先輩が出るOBの集い、プレミアなんだぜ、お金払ってでも近づきたい人が山ほどいるってこと」
「白田、やっぱお前バカにしてるだろ」
「いや、それぐらいモテる人だって言うことをアピールしてるんですけど…」
先輩に羽交い締めにされながら、白田先輩が私に助けを求める。
「モテるのは集いを見ればわかります…ある意味、すごかったです。行ったことないですけど、アイドルのコンサートに行った気分になりました」
「めちゃくちゃ興味なさそうなのもわかってたよ、でもあの中で多分俺の話の内容を1番理解してくれたのは、久高ちゃんだと思ったから質問振ったんだよ」
先輩のまっすぐな目に捕まった気がした。
「皆さん、先輩に見惚れてたから、仕方ないですよ」
「久高ちゃんは全く俺のこと見てなかったけどね」
「別に…見てないって言うか…他の方の圧が強くて…見るの悪いかな〜って。でも話はちゃんと聞いてました。就職に対して何をしてきたか、どういうことに気をつけていたかとか…すごい参考になりました…でも…」
「…でも?」
「先輩みたいにストイックにできるかなって…不安にもなりました。私、結構自分に甘いから…」
「ほら、やっぱり、ちゃんと聞いてくれてる。あの後、もっと話したかったのに、気づいたら居なくて、次の回に会えると思ったら、どこ探してもいないし、どうにもならなくて白田に探してって頼んだんだよね」
「急に来たと思ったら、同級生か1個上にショートカットの美人いないかって…一学年の人数考えたら、探し出すのは無理ですよって言ったんだけど、諦めてくれなくてさ…まさか久高のことだとは」
「まさか1年とは思ってなかったけどね。お前、無駄に顔広いから知ってるかなって」
「無駄には余計です!久高、どうする先輩のお誘い、受けとく?」
「いや、あの…集いに来ていたお姉様方を敵に回す度胸は…」
「確かに、昔はファンクラブ?みたいなのもあったって先輩達が言ってたの今思い出した」
「いや、だから、お前フォローしてんの?トドメ刺してんの?どっちだよ」
「もちろんフォローのつもりだったんですけど、あれ?間違えました?」
2人のやり取りにこらえきれなくて笑ってしまった。
「じゃあさ、連絡先交換しよ、それならいい?」
彼の優しい笑顔にほだされて…連絡先を交換したのが始まりだった…。これが気まぐれな軽いナンパなら、連絡も来なくなるだろうと思ってたけど、そんな人じゃないことはすぐにわかった。はじめは白田先輩と由美と4人で食事から、次は2人で映画に行って、徐々に距離が縮まっていった。ゼミが決まった時も1番に報告して、誕生日もクリスマスも…2人でいるのが当たり前になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます