第16話 先輩の先輩が噂の人でした

 それから、しばらくして、ゼミ決めの相談に知り合いの先輩の所を訪ねた。約束の時間にいくと、他の人と楽しそうに話してて、時間を間違えたと思って出直そうとドアノブに手をかけた。

「久高、いいよ、入って。先輩すみません、こいつと15時に約束してて」

「あっ、いや、大丈夫です。もう少し時間ずらしてから来ます」

 話し中なのを邪魔してしまったと思って、持っていたドアノブを閉めようとすると大きな声が聞こえた。

「あー、あの時のショートカットの子!」

「先輩が言ってた子って、久高のことだったんすか?」

「ふーん、久高って言うんだ。久高ちゃん入っておいで」

「え、いいんですか?」

「いいよいいよ、俺がこいつのとこ急に来ただけだからさ」

「はっ…はい、おじゃまします」

「久高ちゃん、今日は何聞きたいの?」

「先輩がなんで聞いてんすか」

「あの…」

「ゼミ決めの話だろ?久高、うちのゼミ希望なんですよ」

「そうなんだ、一応俺もゼミのOBだけど」

「ハハ、そうっすね」

「そうなんですか?」

「まあ、かなり上だけど…で、何聞きたいの?」

「あの…進藤教授のゼミはやっぱり人気で…もし無理なら、他の候補も考えないといけなくて…白田先輩はどの教授を候補にしてたか聞きたくて」

「同じ路線で言うなら、川上教授や薮下教授だよね」

「久高ちゃんは、どうして進藤教授のゼミがいいの?」

「高校の時、オープンキャンパスで進藤教授の模擬授業受けて、ここに来たいって思って、大学決めたんです」

 勢いよく答える私に先輩は笑って答える。

「それをきちんとゼミ希望に書いたらいいよ。このゼミでしたいことや学びたいことをちゃんと書けば、進藤ちゃんならわかってくれるよ」

 回る椅子に座って、くるくる回りながら軽く言う。

「でも…他の人と同じような感じにならないんですか?」

「上っ面で書いた文章かそうじゃないかぐらいは、進藤ちゃんならわかっちゃうと思うよ。ボーっとしてるように見えて、よく見てる人だから」

「先輩、ボーっとは言いすぎですよ。でも進藤教授は態度や会話を汲み取ってくれる人だから、久高の熱意ぶつけてみたら、多分大丈夫だと思うよ。講義も真面目にでてるんだろ?ちゃんと見てくれてるよ」

 2人でウンウンってうなずいて、2人で納得して話が終わってしまった。


「で、久高ちゃんは白田の彼女?」

 にこやかな顔が急に真面目な顔になった。

「はっ?いやいや、それは違いますよ。高校の時の後輩で…」

「でも1年で3年だろ、交流ある?」

「生徒会だったんで、人数少ないわりに活動多かったんですよ…な、久高」

「はい、そうです!ちなみに白田先輩の彼女は私の友達です!」

「おい、久高、余計な情報言わなくていいから」

 私たちのやり取りを聞いた後、先輩はまた大きな声で笑った。



 



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