第15話 元カレとの出会い

 初めて出逢ったのは、大学のカフェテリアだったと思う。2つ上の仲良い先輩が1人じゃ緊張するからって連れていかれたOB·OGとの集い。出席してたのは3、4年のお姉様方がほとんどで、1年生は私だけだった。先輩の言う、緊張で話も聞けないぐらいかっこいい人が想像できなくて、単純に見てみたい!ただそれだけの興味本位だった。かなりの人数が入るはずのカフェテリアがいっぱいになっていることに驚いてると座った席の女性がみんなメイクや髪を直してて、隣の先輩もご多分に漏れず、髪を整えてグロスを塗り直してた。そうこうしてると、カフェテリアの入口から黄色い声や、ため息、歓声があがって、何人かの男女が入ってきた。各テーブルに1人ずつ座っていって、私達の席に座った人がどうやらみんなのお目当てらしく、口々に"いいな"や"残念"なんて声が他の席から聞こえてくる。座った男性は、確かに俳優やアイドルと見紛うぐらいに整った顔立ちで物腰も柔らかくモテる人に見えた。しかも女性陣の視線をものともせず、淡々と話を進めていく彼はこういう状況に慣れているんだろう。

「じゃあ、質問何かあれば…」

 席にいた私以外の女の人全員、手が挙がって、面食らっていると

「好きなタイプは?」「彼女はいますか?」「好きな髪はショートですか?ロングですか?」

次々とでてくる関係のない質問に、ひとつひとつ丁寧に答えていい人であることは間違いなかった。

「ショートカットの君、なんかある?」

 手も挙げていなければ、存在すら消していた私に先輩は声をかけてきた。

「へっ?あっ、私ですか?」

「そう、ショートカットの君!」

 色とりどりの長い髪、ストレートだったり、ふわっと巻いてたり、色気のある女の人たちの中で私のショートは異質に見えたんだろう。彼の興味本位でからかうような視線とお姉様方の刺さるような視線に耐えながら、仕方なく質問を考える。本来のテーマは、"これからの就活を知る"だったので

「会社を選ぶ時って大事なことはなんですか?」

至って、どストレートな質問をした。

「そうだなー、まずはその会社でしたいことがあるかってこと。したい仕事とできる仕事は大きく違うからね。大手でも中堅でも入社して、何がしたいかをはっきりイメージできる会社を選ぶ事だね」

「先輩が入った会社は、先輩のしたいこと、させてもらえてるんですか?」

「ハハ…そうだなー、まだまだ下っ端だから、させてもらえることは限られてるけど、希望も出してるし、そうなるための努力も怠ってないつもりだから、その時が来たら、ちゃんと結果を出したいと思ってるよ」

 ある意味、普通な答えは、他の人には面白くなかったんだろうけど私にはためになる答えでいい集いだった。

 その後、何回かあった集いは、先輩のお友達が無事復活して参加できたらしく、お呼びはなかった。

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