第14話 2次会は楽しい

 本田の圧に負けて、次に行くことになったのに休みの前の日だからか、カラオケは空きがなかった。諦めきれない本田のために佐藤先輩が部屋を提供してくれた。佐藤先輩の部屋は、イメージ通りの落ち着いた雰囲気で、突然だったにもかかわらず、綺麗に整えられていて、みんな感嘆の声をあげた。

「さすが佐藤さんって感じの部屋っすね」

 途中で買ったお酒やおつまみをテーブルに置くと、関口さんが部屋の中を散策し始めた。

「おい、あんまり見るな」

「えっ、何か変なものあるんすか?」

「アホ、あるか、そんなもん」

「まあ、あっても、見えない所に隠してるわな」

「何言ってんだよ、文哉」

 亀井先輩と関口さんにからかわれて、あわてた佐藤先輩の様子がおかしかったのか雫がクスッと笑った。

「久高、なに笑ってんだよ」

 佐藤先輩も酔ってるのか、雫のほっぺをつねるような動作をする。

「あー、佐藤先輩が雫にちょっかい出してるー」

 完全なる酔っぱらいの本田が、雫の隣に走っていき、対抗して佐藤先輩の頬を両手でつぶす。

「本田、お前、それやめろ」

 つぶされたままの佐藤先輩と本田の格闘はしばらく続いていたが、亀井先輩の一声で本田が渋々手を離した。


 リビングにあるソファーや床にそれぞれが座って、今日もう何度目かわからない乾杯をした。

「ねぇー、なんか遊ぼうよ」

「さんせーい」

 本田の提案に関口さんが乗っかった。

「遊ぶっていってもなあ」

「佐藤先輩、ゲームとかないんですか?」

「あるにはあるけどコントローラが足りないよ」

「ボードゲームとかは?」

「あると思うか?まぁ、かろうじてトランプとウノぐらいはあるけど」

「えっ、トランプって」

「マジックにハマって、トランプの手品の練習してたから」

「…佐藤さん…似合いすぎです!!」

「関口、お前しばくぞ!」

「嘘です!」

「じゃあ、トランプでもします?」

「罰ゲームありきでやりましょう〜」

「はいはい」

 佐藤先輩が軽快にトランプを切り始めた。酔っぱらい達のババ抜きは、思った以上に面白く、それぞれの個性がバレバレでわかりやすかった。最初に負けた関口さんは一抜けの佐藤先輩にしばらく喋るなと言われてバツを描いたマスクを渡されてた。2回目に負けた阿部は関口さんにプロレス技をかけられてた。3回目に負けたのは雫で亀井先輩が悩んで、質問を始めた。

「何聞こうかな~久高の元彼って年上?同い年?」

「えっ、あっ、あの…年上です」

 質問の内容に焦りながらもバカ正直に答える雫をみんながニヤニヤ見てる。

「嘘、雫って年上と付き合ってたんだ、いくつ違い?」

 罰ゲーム関係ない阿部がさらに質問する。

「えーと、…佐藤先輩達と…多分…同じです」

 答えると同時に持ってた缶酎ハイをぐいっと飲んで大きく息を吐いた。

「けっこう上だ!渉、残念だね!俺たちは雫のLINEに引っかからないって」

「いや、阿部、なんで俺を巻き込むの」

「そうかー、石木は久高狙いかー」

「亀井先輩、そこだけ拾わないでくださいよ!」

 その場を盛り上げようとする亀井先輩とは対照的に、佐藤先輩は雫を見ていた。



 


 

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