第11話 飲み会での話
「本田は?彼氏いるのか?」
「亀井先輩、それセクハラです!」
「まあ、聞くまでもないですよ。いないだろ」
「だから、阿部!セクハラ」
「で、いるの?いないの?」
「いません!!だから関口さんもセクハラです!」
お腹を抱えて笑う浜沖さんが向きを変えて雫を見た。
「久高ちゃんは彼氏いないって言ってたよね?」
ニヤニヤしながら顔を覗き込む浜沖さんや関口さんと一緒になって、本田や阿部も興味津々で見ている。今まで、そういった話に参加した事がないからか、俺や佐藤先輩が気にしてるのに気づいた亀井先輩が苦笑してる。
「はい…いません」
「だから、俺、立候補するって」
「関口、却下」
「えー、なんでですか!」
「お前軽すぎ」
「佐藤先輩、何をもって俺が軽いと!」
「すべて!!」
2人のやりとりで、場が盛り上がって、話題が変わった後、雫のビールを飲むペースが少し早くなっていた。
飲み会が始まって1時間たった頃、だいぶ酒量の増えた本田と関口さんが阿部をさかなにいじってるのを楽しそうに見てる浜沖さんと、雫を囲むように座ってる佐藤先輩と亀井先輩と俺の2つのグループに分かれてた。
「久高、ペース早くないか?」
おかわりを頼もうとする雫を見て、佐藤先輩が声をかける。
「そんなことないです…大丈夫です!」
言葉とは裏腹に、赤い頬と潤んだ瞳、いつもより口数が多くなってる雫に、入社から一緒にいる俺や佐藤先輩が気づかないわけなかった。
「酔ってる?」
「だから酔ってないよ」
俺の言葉に笑いながら答えても、説得力なくて余計心配になる。
「亀井先輩の彼女って、どんな人ですか?」
「何、石木、お前がそれ聞く?しかも彼女いる前提?」
話題を振ろうと言ったつもりが亀井先輩に逆に突っ込まれる。
「私も聞いたことがあります、亀井先輩の彼女は美人だって」
援護射撃で雫に言われて、亀井先輩も笑うしかない状態だ。
「酔っぱらいだなー、本田といい勝負だわ。文哉別れてどれくらいだっけ?」
「へっ?」「えっ?」
「あー、半年たったなー、今はいないよ」
「すみません、変なこと聞いちゃって」
「バーカ、謝んなよ。別に隠してたわけじゃないし…だからといってわざわざ話すことでもないからな」
「まあ、やっと立ち直ったしな」
「武史、何言ってんだよ」
「自分から振ったくせに、引きずってたのはお前だろ」
「気持ちはどうにもなんねーだろ。彼女に振られる前に先に振っただけの話で、遅かれ早かれ、別れてたんだから」
ぶっきらぼうに言いながら、亀井先輩の気持ちが見え隠れする。
「…意外っす、なんか」
「石木〜、どういう意味だよ」
「なんか、もっと俺様な恋愛のイメージだったんで…」
俺と亀井先輩のやりとりを見て、佐藤先輩がクスクス笑ってるのに、さっきまで笑っていた雫は全然笑わなくなっていた。
「…それって、まだ好きなのに振られたくないから振ったってことですか…?」
「おいおい久高まで、どうした。今日は俺を追い詰める会かよ、武史助けてくれよ」
「久高、どうした?酔ってる?」
「酔ってないです」
普段なら言わないであろうセリフに佐藤先輩も驚いてる。
「うーん、まあ文哉のところは長く付き合ってたからお互いのこと良くわかってて…相手が自分に興味なくなったり関心がないのって態度でわかるよね。彼女からサインがでてるのに無視できないし、文哉も彼女もお互い仕事忙しかったからそれをフォローする時間がなかったんだ」
「佐藤先輩、彼女さん知ってるんですか?」
「俺と文哉と彼女は大学の同級生だから知ってるよ」
「好きなのに…そんなのわからないです」
雫が涙をためてることに気づいたのか
「久高、酔い過ぎ。少し外の空気吸いに行こ」
佐藤先輩が自分の腕に雫の腕をくぐらせ、持ち上げるように立たせると部屋の外へ出ていった。
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