第9話 心配かけていたらしい
「…なんかホッとしました。ずっと不安で…教えてくれる先輩を無視なんてできないし、誰にも言えなくて」
「お前がSOS出してくれたら、いつでも動くつもりでいたのに、何も言わないし心配してたんだ。昼間のこと石木から聞いて慌てたよ」
「関口たちに協力してもらって、文哉と本田にわざと女子社員の前でご飯に行くのを匂わせてもらった」
「えっ、椿も知ってたんですか?」
「いや、あいつはわかりやすいから、文哉がうまく誘導して連れてきたから知らないよ」
「よかった…椿のことだから怒鳴り込みに行っちゃうから」
「あり得るな…まあ、来るかどうかは賭けだったんだけど、まさか片岡一人で乗り込んでくるとは思わなかったよ。悪かったな、嫌な役やらせて」
「そんな…でも浜沖さんや関口さんに迷惑をかけて…研修で来てるのに」
「いいのいいの、佐藤さんにはお世話になったし、どうせホテル帰っても寝るだけだから、久高ちゃんや本田ちゃんとうまいメシ食えてラッキーだったよ」
関口さんが満面の笑みでピースすると浜沖さんも大きく頷いてくれた。
「佐藤先輩に雫の様子がおかしかったら教えろって言われてたんだ。意味わかんなかったけど、今日のことだとわかって、すぐに言いに行った。黙っててごめん」
渉は、ばつが悪そうに私を見た。
「渉ありがとう、佐藤先輩、浜沖さん、関口さんも本当にありがとうございます」
感謝しかない私は、みんなに深く頭を下げた。部屋の外から、私の名を呼ぶ椿となだめる亀井先輩の声が聞こえて、あわてて返事をして部屋をでた。
次の日の朝、エレベーターホールに立っていた私の横に佐藤先輩が立った。
「おはよう」
「おはようございます」
「あれ、石木は?」
「いつも一緒じゃないですよ」
「そうかー?2人で1セットだと思ってたからな…」
「確かに、ほぼ一緒ですけど…フフ」
「しばらくは、石木から離れないように本田や阿部でもいいから1人になるなよ。何かあったら、すぐ連絡いいな!」
「はい」
並んで待つ間、いつもより緊張して、前しか見れなくなっていた私を見て、佐藤先輩が苦笑する。
「久高、呼吸しないと倒れるぞ」
「は、はい」
「久高ちゃーん、佐藤さーん、おはようございます!」
「うるさいのが来た」
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
元気な関口さんと浜沖さんといっしょにエレベーターに乗り込んだ。
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