第5話 にぎやかな先輩のお誘い

 終業時間と同時に部屋に飛び込んできた関口さんとその後ろから男の人がもう一人笑いながら入ってきた。

「佐藤さーん」

 関口さんの声が部屋中に響く

「佐藤先輩は、今会議中で…」

「えー、何時に終わる?久高ちゃん」

「予定の時間は過ぎてるんですけど…」

「そっかー、じゃあ待とうかなー祐太も待つよねー?」

「ああ、朝はぎりぎりで佐藤さんに挨拶できなかったから」

「亀井さんは?挨拶できた?」

「うん、昼休憩の時にね。亀井さんが新人の子と本気でケンカしてて笑っちゃった」

「椿と?ケンカしてました?」

 思わず会話に入ってしまった。

「うん、まあまあ本気のやつ。最後は

"お昼行ってきます"って捨て台詞みたいに言って、亀井さん呆気にとられてたよ。俺の時はあんなに歯向かうなんてできなかったから彼女すごいね」

「亀井先輩が教育係だったんですか?」

「そう…えーと久高ちゃん?でいいのかな?俺、関口と同期の浜沖祐太。よろしくね!」

「あ、はい、よろしくお願いします。あれ名前…」

「ハハごめんごめん、関口が朝から大騒ぎでさ、佐藤さんについてる久高ちゃんがかわいいって研修中ずっと言ってたから」

「おい、祐太バラすなよ~」

 会議室につながる廊下から人が大勢出てきた。

「佐藤さーん、終わりました〜?」

「関口、お前何、久高に絡んでんの?あれ浜沖、久しぶりだな、頑張ってるか?」

「だからー、なんで祐太には、優しいんですか、ずるいっすよ」

「それはお前が暑苦しいから…」

「ご無沙汰してます、佐藤さん」

「今、誰の下?だっけ、埼玉だろ…三木さん?」

「はい、めちゃくちゃしごかれてます。でも亀井さんに比べたら楽ですけど」

「三木さんかー、あの人の下なら大丈夫だよ。で、研修はまだ後2日あるんだろ、懇親会とか食事会とかは?」

 佐藤先輩の視線が関口さんに向くと待ってましたとばかりに話だす。

「明日は懇親会なんですけど、今日は初日なんで佐藤さんと久しぶりにご飯食べたいな〜なんて」

「関口、お前俺にたかりに来たの?」

「違いますよー。佐藤さんと積もる話を久高さんも一緒にねっ!」

「なんだ、それが目当てか。どうする久高、こいつらと一緒に飯行くか?」

 片岡さんに言われたばかりで言葉に詰まる。

「俺もいいですか?佐藤先輩?」

「もちろんお前も頭数に入ってるよ。石木が来るなら久高も来やすいだろ…どうする?」

「渉が行くなら…行きます」

「じゃあ、決まりだな。俺、部長にちょっと報告あるから、石木と久高は切りの良いところであがって。関口と浜沖は下で待ってて、あと店ピックアップしといて」

「ハーイ、任せてください、行こ祐太」

 佐藤先輩が出ていって、さらに2人が出ていくと、急に部屋が静かになった。

「渉、ありがとう…ごめんね、気を使ってくれたんだよね?」

「あんな話聞いた後だし、お前一人なら目立つけど、俺とセットなら問題ないだろ。先輩の誘い断るのも角が立つしな」

「うん…断るのは失礼だけど、一人で行くのは勇気がいる。本当に助かったー、今度何かお礼するね」

 仕事を手早く終わらせて、佐藤先輩を待ってると亀井先輩と2人で戻ってきた。

「後で店連絡して」

 亀井先輩が出ていくと、上着を手に先輩が行こうと促して、3人で部屋をでた。



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