第6話 明晰夢から覚められない時って怖いよね

どのくらい、気を失っていただろう?


 男は、ベッドの上で仰向けの状態になっている。

そして、頭部を除く体全体を覆うように羽毛布団が敷かれており、

意識をなくす前までは明るかった室内はもう、静寂の闇に包まれている。


「夢..か..?」


 男は、重たい瞼を持ち上げ、乾燥気味の瞳を指で擦りながら呟いた。

まだ定まらぬ焦点の中、ざっと周りを見渡す。


 あの、美少女の姿はどこにもない。


「だよな..」


 男は、鼻で笑い、再度布団の中に潜り込んだ。


「普通に考えて..、美少女がいきなり家に来るなんて展開..。

二次元以外にはありえない..か..」


 時計の針を見る。

現在時刻は深夜1時45分ーー

良い子なら、もうとっくに眠りについている時間。

それに自分だって、本来であれば23時には就寝している。


 つまりーー


 気付かぬ間に、寝落ちしてしまっていた。


 それが、俺の出した結論。


 するとこの時、『ジャアー』という、水を流すような音が

台所の方から聞こえてきた。そうか、母さんも帰って来たんだな..。


 母は、仕事の都合上、夜皆が寝静まった時間帯に帰宅する事が多い。

だから今も俺が寝ているのを見計らい、極力物音を立てぬよう、

一人で少し遅めの夜ご飯にありつき、食べ終わった食器を洗う。


 そんな光景が、マジマジと目の前に浮かんでくるような心地がした。


「....。はぁ..。でもこれで推測が確信に変わったよ..。”あれ”は夢だったって..」


 良い夢だった。

今まで見た夢の中で、一番の夢は? と聞かれたら、今日の夢を答えるだろう。

出来れば、今から眠りについて、あの夢の続きを見たいものだ。なんて欲張り、、


 言っちゃダメ....


「ーーー」


 か..? て、あれあれ? 部屋の外から人の話し声のようなものが..?


 まぁ、、気のせいだよね..。

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