第23話

  【一人称、主人公の視点】


「おーっ。ててて……。こりゃ、まいったぞいっ!」


 僕の爆発に巻き込まれたニャーゴが、ひどく痛そうにしてる。


「ニャーゴ、大丈夫? ボロボロになってるよ」


「まったく……、こんな目にあうとは思わんかったぞい」


「ヒール、かけようか?」


「いや、もう大丈夫じゃ。一応、神の体じゃからの。ある程度時間がたてば、勝手に治るぞい」


「なんだか、僕、急に胸のうちが熱くなってきて……、気づいたらメカ・ゴーレムを破壊して、それから、なんだか爆発しちゃった」



《ちっ……。どうして、魔王の完全体にならんのじゃ……。こいつみたいな奴、見たこともないぞい》


「ニャーゴ、なにか言った?」


「い、いや……、なにも言ってないぞい。気のせいじゃ」

 ニャーゴはあわてたように、プルプルと首をふった。




 僕は、クレーターの穴を登っていった。平原の上に立ち、周囲をみわたす。


 レベルがあがったおかげで、僕の視力は、かなり良くなっていた。


 2km以上はなれた高台の上に、倒れている人物が見えた。


「ニャーゴ、あそこに誰かいるよ」

 言って、僕は人物のほうへ走りだした。


 近づいていくうちに顔が見えてきた。僕は驚いた。

「高台の上に倒れていたのは、父さんだ!」



 僕は、いそいで駆けより、仰向けに横たわっている父上の横にしゃがみ込んだ。

 父さんは、今にも死にそうな様子だった。紫色の顔つきになっていた。


「父さん、大丈夫!? しっかりして!」


「ア……、ア……」

 白目をむいて、ちゃんと話すことさえ出来ない状態のようだ。



 放っておいたら数時間とたたずに死んでしまうだろう。


「父さん、いま、ヒールかけるからね!」

 僕はいって、魔法をとなえた。「『完全パーフェクト神ってるヒール』!」


 ヒールをかけると、とたんに父さんの息がおだやかなものになった。顔色も血色のよい、健康そうなものに戻っていく。


「よかった」

 僕は、ホッとひと胸をなでおろした。

 父さんは安心したように眠っている。


 僕は、父さんの体を担いだまま、屋敷へと帰りはじめる。


「おまえ、そのままの姿で帰るつもりか?」


「ん、ニャーゴ、なにかおかしい?」


「今のおまえ、チンコとキンタマまるだしの、すっぽんぽんじゃぞい!」


「えっ?」


 僕は、あわてて自分の体を見おろした。

「うわっ、本当だ」

 僕は、自分が真っ裸であったことに気づいた。


「あの爆発で、服が吹き飛んじゃったんだ」

 僕は、自分にむけて、ヒールをとなえた。「『完全パーフェクト神ってるヒール』! ……ってあれ?」

 なにも起こらない。


「おかしいな。汚れた床の絨毯じゅうたんとかは、ちゃんと元通りにきれいになったのに、服がもどらない」


「そりゃそうじゃ。その呪文は、人体だけでなく、壊れた物も修復して元通りにする効果がある、ってだけだからな」


「どういうこと?」


「つまり、超高温の大爆発で蒸発し、完全に無くなってしまった服を、ふたたび生み出すことはできんってわけじゃ。なおすことはできても、無から有をを生み出す呪文ではない」


「こまったな。すっぽんぽんでチンコとキンタマまるだしのままじゃ、屋敷の使用人とかに見つかったら大変だよ」


「まあ、その年齢だったら、若い女のメイドに見つかっても、ぎりぎり許される範囲じゃろうて」


「でも、恥ずかしいよ、僕」



 そこで、僕は、誰にも見つからないように、屋敷に忍びこむことに決めた。


 スヤスヤと眠る父さんを肩にかかえて、屋敷へと戻る。


 正面の出入り口でなく、横手の壁を飛び越え、屋敷の庭に入りこむ。


「父さんの寝室の位置はわかっている」


 僕はスニーキングミッションのように、誰にもみつからないように、父さんの寝室の部屋の窓までやってきた。


「よかった。窓が開いてるぞ」


 僕は、ピョンッ、とジャンプした。もちろん、全身に精神エネルギーを張り巡らせている。


 僕の体はやすやすと跳ね上がり、2階にある父さんの寝室の窓から入りこんだ。


「ふう、なんとか、誰にも見つからずに来れたようだね。よかった」


 父さんの体をベッドによこたえる。父さんは血色の良い顔色で、すやすやと眠っていた。


「僕も、自分の部屋にもどって服を着なきゃ」


 僕は窓から飛びでると、忍者のように屋敷の壁を伝っていった。自分の部屋を目指した。

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