第4話

 地上に一匹の黒猫が降りたった。名前はニャーゴ。

この黒猫、リーリャにチート能力を与えた悪神あくじんが猫の姿に変化した姿だった。


「ほーほほほ……。外界に降りるのも久しぶりじゃのう」


 ニャーゴはあたりを見渡す。すぐ近くに、リーリャが住む、ナイヨール伯爵の屋敷が見えた。


「さてさて、刀也とうや……、転生後の名前はリーリャじゃったか。あやつの負の感情エネルギーはどれくらいたまったかのう……」


 ニャーゴは屋敷へ向かって進んでいく。


 ニャーゴが屋敷に入ると、ナイヨール伯爵家の数少ないメイドの一人が洗濯物を干していた。若くて、なかなかかわいかった。そしてなによりおっぱいが大きかった。


(おおーっ! ぐへへへ……)

 ニャーゴ(中身は、ハゲで白ひげの爺さん)は、いやらしい顔つきになって、かわいいメイドに歩み寄っていく。


「にゃーぉー……」


「あれ? 猫ちゃん?、どこから入ってきたの?」

 メイドが黒猫のニャーゴに気づいて、洗濯物を干す手をとめた。


「にゃー……」

 ニャーゴはメイドの足元にまといついた。


「ふふふ、猫ちゃん、ちょっとくすぐったいよー」


「にゃー……」

 ニャーゴは、メイドの足首に顔をこすりつけながら、顔をあげる。

 メイドのスカートの中が見えた。この世界は中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界だったが、若い女の下着は、現代の地球のようなセクシーなものが多かった。


 若いメイドーのパンツは質素な白いものだったが、それはそれで十分にセクシーだった。


「うぉーっ!! 最高じゃぁああーっ!」

 ニャーゴの頭に血が登って、やがて……、

「ぶはっ!」

 鼻血を吹き出して倒れた。


「ちょっと、猫ちゃん、どうしたの? 大変!」



  ☆☆☆



 メイドに介抱されて、ようやくニャーゴは意識をとりもどした。



「猫ちゃん、大丈夫?」

 気づくと、ニャーゴはメイドに両腕で抱かれていた。眼の前にメイドのおっぱいがあった。

(うおおおおおーっ!!!)


「にゃー! にゃー!」

 ニャーゴが顔をメイドの胸にすりすりする。


「きゃはっ。猫ちゃん、くすぐったいよーっ!」

「にゃー!」

 すりすりすりすりーっ!

(うほっ。若くてかわいいメイドは最高じゃのーーーっ! うへへへへへへ。……はっ)


 そこで、ニャーゴは本来の目的を思い出した。


(そうじゃ。リーリャの負の感情エネルギーがどれだけたまったか、見に来たんじゃったわい)


 ぴょんっとメイドの腕の中から飛び出した。

「あっ、猫ちゃん、どこいくの?」

 ニャーゴは呼びかけるメイドを後にする。


 目指すは、リーリャのいるところだった。



 やがて、ニャーゴはリーリャの部屋の窓の下の地面までやってきた。

「かなり負の感情エネルギーを発生させる才能のあった奴じゃったからの。この世界のこれまでの人生では、兄にいじめられ、継母には憎まれてきたはずじゃ。そうとう鬱憤うっぷんがたまっておるはずじゃ」


 たまりすぎた負の感情エネルギーは、完全には『魔王の核』の中に完全に封じ込めてておくことはできず、一部はあふれだす。


 そうすれば、絶望や怒り、苛立ち、暴力をふるいたいといった、負の感情にとらわれつづけることになる。


「さて、さて、今頃、負の感情エネルギーがたまりすぎて、大変なことになっておるじゃろな。ぐふふふ……」

 悪神あくじん、ニャーゴが黒い表情でニヤリと笑う。


 ニャーゴは、屋敷の外壁をうまく登って、リーリャの部屋の窓までやってきた。


(きょほほほー! どんな黒い顔になってるか見てやるぞいっ!リーリャの現状を!)


 ニャーゴが、窓から部屋の中をのぞく。


 そこにリーリャがいた。晴れ晴れとした、明るい顔で。


「なぬ!? どういうことじゃ?」


 ニャーゴは、少し考えて、

(さては、リーリャめ。経験値稼ぎをサボっておったな。だから、負のエネルギーをためられるだけの肉体になってないのじゃ。……飽きっぽいZ世代でも、簡単、お気楽に経験値がどんどん稼げる、超絶イージーモードに設定してやったのに、まさか、全然経験値を稼いでおらんかったとは……。どんなにサボりぐせのある人間でも、ちょっと狩りをするだけでも、すぐにレベル30くらいには到達するというのに……)


「ちぃっ……」

 ニャーゴは舌打ちする。


 その間も、部屋にいるリーリャは、人生を謳歌おうかするようにニコニコしていた。


 こやつ負の感情はぜんぜん抱かんのか。どうせ、『魔王の核』に負の感情エネルギーも、ほとんどたまっとらんじゃろて……、どれ、念のために見ておくか。

 悪神あくじんは、自分が持つ固有スキル、魔眼(黒)を発動する。これは、『魔王の核』にたまった負の感情エネルギーの量を鑑定することができるスキルだ。


 リーリャの核を魔眼(黒)で見た瞬間、ニャーゴの全身が震えた。

「ぎょええええええっ! なんじゃ、この莫大なエネルギー量は!?」


 リーリヤの胸に埋め込まれた『魔王の核』は、ありえないほどの量のエネルギーをたくわえていた。


「ヤバイぞい……。エネルギー量が常識外れに多すぎるっ! いったい、何がおこっておるのじゃ!?」

 ニャーゴは驚いて、目をまるくする。


「わけがわからないぞい! ……一応、ステータスも見ておくか」



☆――――――――――――――――――――☆

 【名前】 リーリャ・ナイヨール

 【職業ジョブ】 初心者ノービス

 【レベル】349

☆――――――――――――――――――――☆


「ぎょえええええーっ。レベル349じゃと!? この世界じゃ多少強い魔王でも、せいぜいレベル70くらいじゃぞいっ! 9歳にして、いったい、どこまでレベルあげとるんじゃっ!」

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