彩葉⑨ 月曜日の教室・続き
「宝くじバラの束はある一定の規則性に基づいて並べられています。例えば一枚目の数字が「108625」の六桁だったとしましょう。すると次の一枚、最初の二桁はそれに「プラス1」して「11」、三桁目は「プラス3」して「1」、次の四桁目は「マイナス1」して「5」、次の五桁目は「マイナス3」して「9」、そして最後の末尾六桁目は「プラス1」して「6」、つまり二枚目には「111596」のくじが入っています。基本的にはこのパターンで一見、ランダムに選ばれたかのような十枚のバラの宝くじが入っているんですよ」
―――ええーっ、それボクが言いたかったのにーー!
絶対ではないが、だいたいの数字は見当が付く。今、颯真の言った話は昨夜、アニキから聞いた話ともほぼ合致するものだった。
「し、知らねえよそんなこと!」
颯真の言葉を受けた
「ただしこれはあくまでも基本パターン。中の十枚が十枚とも確実にこのパターンで並んでいるとは限りません。ただ、いくつか・・・例えば中の三~四枚だけ、そのうちの一桁だけが前後の数字に置き換わっていることはあっても、だいたいは今言ったパターンで並んでいます。なので最初の一枚の数字がわかれば、残る九枚の数字もおおよそは見当が付くんですよ」
それだけ言い終わると、再び手元の教科書にその視線を戻す颯真。その様子を唖然とした表情で見つめていた大介だったが、しばらくすると気を取り直したかのように一度頷き、再度ボクに詰め寄って来る。
「で、でもよ、そんな事をもし知ってたって、あの一瞬で中身の数字を全て計算するのなんか不可能じゃねえかよ! お前らも見ていただろうがホンの一瞬だったんだぜ、落ちた宝くじを拾い上げてからお前らに返すまではな!」
少し震えながらも自信満々に言い返す大介。そんな大介に今度こそボクは言いたかったことを告げる。
「だからさ、さっきも確認したよね、大介はあらかじめ解っていた、って」
「あらかじめって・・・前々からってこと?」
「うん、そうだよ。あらかじめ・・・詳しくは
「宝幸神社・・・? ああ、当選のお祈りに行った時ね。あの時は偶然大介に会って、それから・・・ってまさか写真!?」
「そうだよ。あの時、写真撮ったでしょ、三人でさ」
ボクは先日、宝幸神社での事を回想しながら続ける。
「あの時、最初は七海の発案で写真を撮った。でもその後、宝くじをアップにして写真を撮ろうってことで大介も自らのスマホで写真を撮った。ねえ、そうだよね大介」
「・・・・」
「それで大介は七海の顔は映さないでよって言う言葉も受けて、宝くじを中心に写真を撮った。あれだけのアップで撮ったなら、一枚目の宝くじの番号もちゃんと写っていたはずだよね」
「そ、それは結果論だろ・・・」
「そう、結果論。さっきも言ったように、写真を撮ろうと言い出したのは七海だからね。だからボクは思うんだ、最初は大介としてはそんなつもりはなかったんじゃないかなって。でも急遽、写真を撮る流れになった時に思いついたんだ、これは利用できるってね」
ギャンブルに詳しい大介のことだ、きっと宝くじのロジックも知っていたのだろう。そしてあの瞬間、この作戦を思い付いた。ボクはそう解釈している。
「大介、本当なの!!?」
今まで大人しかった七海が急に声を荒げる。
「・・・・」
「大介、素直に白状して七海に謝りなよ。七海だって少し遠い位置からだけどあの時、写真を撮ってるんだよ。ボクもあの後、転送してもらったけど、さっきの論理で行くと四枚目に当りの番号が入っていたのはほぼ確実だったんだからさ」
「大介、お前なあ~~!」
「ちっ! うまく行ったと思ったのによ!」
―――――
※ 注意
宝くじバラの規則性については、作者が独自に調査したものであり、不確定な要素を含みます。公式に発表されているものではないことをご了承下さい。
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