彩葉⑦ 帰り道
「元気出しなよ
「う、うん、ごめん
自分の売り場から当選番号が出た。この事実が彼女に過度の期待を持たせたのであろう、
***
元気のない七海だったが、珍しくボクが奢ると言うとしぶしぶケンタに向った。その後、マックのランチセットまで一人で食べきった頃にはその機嫌は見事に回復していた。ボクは彼女を励まそうとするあまり、その大食いっぷりを忘れていた。これってやっぱボクの全部持ちなんだよね?
その後ボクたちは買い物も済ませ、午後三時過ぎにはショッピングモールを引き揚げることにした。
「ねえ彩葉、それでさっきの話だけど、大介の当選金っていつ手に入るのかなあ」
「ああ、あれね。なんかアニキが言ってたけど、高額の当選金ってみずほ銀行まで直接取りに行かなくちゃなんだってさ。だから明日以降になるんじゃないかなあ。まあ、すぐに現金になるのかどうかわからないけど」
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ、アイツ
「そうだと思う。今日は銀行やってないから、明日にでも行くんじゃないかなあ?」
大介の性格を考えた場合、きっと一日も早く当選金を手に入れたいところだろう。となれば明日月曜日、学校帰りにでも引き替えに行くのではないだろうか。
「ねえ、私たちの300円だけでも替えて行かない?」
見るとボク達の前にはイオンチャンスセンターの小屋が見えて来た。大介が買ったと言う、今から思えば縁起の良い売り場だ。
「そうだね、300円でも貴重だし、ついでだもんね」
ボクはバッグから末等だけ当りの入った宝くじの束を取り出す。七海も「帰りの電車賃くらいにはなるもんね」と末等のくじを窓口に提示する。しかし運の悪いことは続くもの、窓口のお姉さんが言うには引替えは明日からとのこと。ガッカリする二人。
「あ~あ、なんとなくツイてるようでツイてないよな~」
「でもさ、総合的に見れば一万円当たったんだから今日は良い日だよね」
自分を慰めるように七海に言う。
「だって三千円が一万三百円になったんだから、ええっと・・・」
「まあ言えてるかな、一万円得したことになるのか」
「違うよ七海、三千円使ってるからプラスは七千円??」
「え、でも三百円もあるから・・・って、もうわかんない!」
あははは・・・。
ボク達は開封式のイザコザも忘れ少しの高揚感に包まれていた。
「でもさ彩葉、さっきのチャンスセンター、私たちの当選の貼紙してなかったね」
「そう言えばそうだね」
今ほど換金を断られた売り場、過去の当選の貼紙はあったが今回、大介が当てた二等当選の貼紙はまだ貼ってないようだ。
「きっと大きな売り場だから二等くらいじゃあ貼り出さないんだよ」
「あ、言えてる! ねえ彩葉、今度こそもっと大きな賞金を狙おうね!」
「う、うん、そうだね・・・」
ボクは七海がこのままアニキのようなギャンブル中毒になってしまわないか心配だった。
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