小太郎③ ウインズ鏡ヶ丘・午前

 タバコの匂いと酔っ払いの吹きだまり。

 「ウインズ鏡ヶ丘かがみがおか」は今日も今日とて昼間からワンカップを持ったオッサンたちで賑わっていた。


「行け行けーー!」

「そこだ! 差せ! 差せーー!!」


 そんな中、壁際にもたれて真剣に競馬新聞とにらめっこする俺。朝から東京、そして京都競馬場でのレースを購入しているのだが・・・。


「なんだよこの新聞! 何が『付いてるヤツに乗れ』だよ! 全然来ねえじゃねえか!」

 半分キレ気味にその新聞を自分のももに叩き付ける。


 いましがたのレースも俺のイチオシの馬がゴール直前で転倒! ン千円が紙の藻屑もくずと消えたばかりだ。


「ここまで外れるとヤル気もなくなってくるな」そう言いながらさすったハラがぐぐーっっと鳴る。気が付けば場内の時計はすでに午後一時を指している。


元手もとでは減るけど、縁起付けにカツ丼でも食うか・・・」


 俺は競馬新聞をいったん折りたたむと、若干肩を落としながら併設の食堂へと向った。

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