彩葉④ 最寄駅前

 土曜日にあったドリームジャンボの当選番号は夕方にはネットにアップされた。

 すぐに手元の宝くじを確認したいところだが、ここはガマン! 明日、三人揃ったところで開封式を行なうことになっているのだ。


 ドキドキしながらボクはその当選番号を写メると、仏壇に手を合せる。

「神様、仏様、ご先祖様・・・」


 隣の部屋からは兄の「行け行け! そこだ! 差せ差せ!!」と言う大声が聞こえて来ていた。


***


 翌日の日曜日。ボクは最寄駅もよりえきの前で七海ななみを待っていた。今日はいよいよ大介だいすけも含めた三人で「開封式」のり行なわれる。


 目の前にあるチャンスセンターには早くも「ドリームジャンボミニ、二等10万円! この売り場から出ました!」と言う貼紙がされている。

 ここは先日、七海がそのドリームジャンボミニを購入した場所だ。もしかして・・・!!?

 高鳴る胸の鼓動を沈めていると、その七海がやって来た。


「遅くなってごめん」そうと言うと七海は、今までボクが視線を注いでいたチャンスセンターの方を向く。


「えっ!!」

 途端、言葉を失う七海。きっと瞬時にボクと同じ事を連想したのだろう。


「わ、私、ここで買ったよね?」

「うん! ってことは、だよね!」

「か、可能性あるじゃん!! やっば! ドキドキしてきた!」


 とは言っても何十人・・・いや何百人もの人がここで宝くじを買っているわけだから、その確率はそれでもまだ低い。でもこのワクワク感こそがギャンブルの醍醐味!! きっとアニキならそう言うだろう。


 ボクたちは少しだけ熱くなった体温のまま、待ち合わせのイオン鏡ヶ丘かがみがおか店に向うため電車に乗り込んだ。

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