彩葉② 鏡ヶ丘駅前チャンスセンター

 その日の学校帰り、ボクは七海ななみに付き合って鏡ヶ丘かがみがおか駅前のチャンスセンターに並んでいた。ボクは手持ちがないから、一旦帰ってから近所のスーパー前で買おうかな。


 それにしても平日の夕方にもかかわらず、宝くじ売り場は長蛇の列だ。『一粒万倍日いちりゅうまんばいび』って旗が立っているから、きっと縁起の良い日なのだろう。だって一粒が万倍になるらしいからね。小さな物置小屋のような形をしたその売り場はいくつもののぼりや貼紙はりがみでいっぱいだ。


『スプリングジャンボ二等百万円! この売り場から出ました!』


「ねえ見てよ彩葉いろは! ここで買った人が百万円当たったらしいわよ! わあ! その前の年末ジャンボは二等一千万円だって!!」


 目を輝かせてそれらの告知を眺める七海。自分も仲間入りができるのではと信じるその瞳は再び$マークに輝く。


 ボクたちが買う事になったのは「ドリームジャンボミニ」。

 ン千万円とかは当たらないけど、その代わりに一等の百万円や二等の十万円はそれなりの数が当たる・・・と言うことになっているらしい。


 文字通りジャンボ宝くじの「ミニ版」だ。でもミニって言っても百万円だからね。


 待つこと十分、ようやく自分の番が回ってきた七海は少しうわずった声で「バ、バラ十枚」と窓口のお姉さんに告げる。続いて受け取ったその宝くじの束を、その場に置いてあった打ち出の小槌のようなもので何度もスリスリ。

「神様仏様、どうか当たりますように・・・」


 本当に神様や仏様がいたとして、果たしてこのような不埒ふらちなお祈りって叶えてくれるものなのかな? 疑問に思うボクの隣で、七海のお祈りは後ろのお客さんにかされるまで続いた。

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