「混ざる」

三浦彩緒(あお)

「混ざる」

 私は今、米軍基地のある街に住んでいる。

 その為、外国人居住者も多い。

 街で行き交う人々の半分は、と言っても過言では無い程、それは見慣れた、当たり前の光景だ。

 

 四月から、バスのダイヤ改正により、今までよりも、職場には早目に到着してしまう。

 夜勤前、余り早く着いてもしょうがないので、時間を潰す為に、職場近くのチェーン店のカフェに立ち寄る。

 カフェラテを飲みながら本を読み、一時間近くを過ごしてから向かうのが日課となった。


 或日あるひも、オーダーをしようとレジへ並んだ。

 先に並んでいた客の中に、綺麗なブラウンのロングヘア、すらりと伸びた手足に、ショートパンツが良く似合う、外国人女性が居た。

 そして横には、友人と思わしき外国人男女も。

 と言っても、年齢はきっとまだ十代、高校生くらいだろう。

 

 私はオーダーを終え、いつものテラス席へ向かう。


 席に座り少し経つと、レジで見掛けたその三名も近くの席に座った。

 当然ながら、発せられる言葉は、流暢な英語だと思っていた。

 

 しかし、実際に耳に入ってきた言葉は、驚く程流暢な、『日本語の方言』だったのだ。

 ここまで流暢だと言うことは、きっと、この街で生まれ育ってきたのだろう。

 

 我が家は、子なし夫婦。

 夫は転勤族により、漏れ無く私も、あちこちの街に移り住んでいる。

 同じ日本人でも、やはりその土地の歴史、文化、県民性、言語なども含め、溶け込む事は容易ではない。

 それは、無駄に色々な事を考えてしまう、「大人」になったからなのだろうか――


 彼女達も又、様々な経験をし、目には見えない苦労や、葛藤があったかもしれない。

 

 けれども、ちゃんと、そこに「混ざって」いる。


 違いがあって、当然。

 うまくやれなくたって、良いじゃないか。

 そんな日々の中でも、自分のやるべき事、自分の居場所がある。


 そして、私も又、今日も行くべき場所に「混ざり」に行く。

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「混ざる」 三浦彩緒(あお) @sotocamp2022

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