第15話 秋と冬と、自意識過剰

秋と冬をこよなく愛している。

が、それはあくまで精神的に愛しているだけであって、身体はむしろ秋と冬が苦手である。インフルエンザに加え風邪が流行るほか、なぜか頻繁に不調になりやすいのだ。


たまには自意識過剰から離れた話も書いてみるべきだと思い、今回は秋と冬の良さを書いてみようと思う。ほぼ日記になってしまった。需要はないと思うが……、もし共感してもらえたら嬉しい。


まず秋の魅力から。

自分は秋に限らず、夕方の黄昏が好きである。

春の引き伸ばされる日没までの緩んだ時間、夏の永遠に輝いていそうなオレンジの夕陽、冬の爆速退勤しイルミネーションに主役を譲る控えめな太陽。みんな好きである。


なかでもいちばん好きなのが、秋の夕暮れだ。

夏よりわずかに色あせ、冬ほど退勤を急がず、空の雲を照らしながら堂々と帰っていく姿。

散歩にちょうどいい気候で、キンモクセイの匂いを嗅ぎながらちょっと歩くだけで気分が良くなる秋。お腹が空けばサツマイモにカボチャ、クリ、ブドウ、鮭も美味……新米もいい。あえてアイスを食べ、身に余る冷たさに浸るのも楽しい。


何より、夏に比べ格段に外出しやすくなる。

お気に入りの植物園まで気の向くままに行って、読書に励むとか。美術館や博物館めぐりをするのも素敵だし、所用のついでに本屋まで足を伸ばしても楽しい。もはや何をしても、どこに行っても「秋」というそれだけで気分が良くなる。


やがて来る冬も(秋ほどではないが)好きである。そう、クリスマスがあるのだ。


クリスマス、1年でいちばん好きである。

あの概念ですべてを飲み込み上書きしていく、クリスマスというイベント。人間として生きる以上、クリスマスという概念からは誰しもが逃れられないのである。そこが良い。平等なのだ。

ハロウィンが終わり次第、恐ろしいスピードで切り替えられる売り場は見ていて和むし、クリスマスの翌日には何事もなかったかのように雰囲気が払拭されているのもいい。楽しみはたっぷりと、引き際はあっさりと。


別段、クリスマスに対していい思い出があるわけでもなく、一緒に過ごす家族や友人もなく、毎年だいたい働いているのだが。クリスマスという特別な日を、なんでもない普通の日のように過ごすことが好きなのだ。いつもと同じ時間に起き、いつも食べているものを食べ、いつも通り本を読んで、いつもと同じように寝る。それがいい。


むしろ特別に過ごしたいのが、新年だ。

おせちは絶対食べたいし、初詣は……混雑しているだろうから三が日のいずれかに行くとして、お神酒やお屠蘇は何としても飲みたい。干支を模した土鈴は毎年買っているし、福袋に興味はないけれど売っているのを見るのは好きだ。

それはいったい自意識過剰のどこから湧いてくる感情なのか、さっぱりわからない。


とにかく、早く秋と冬に来てほしい。

月見バーガーにハロウィンにと、もう店頭はすっかり秋一色だけど。まだ暑すぎる。


そういえば先日、出先のハンバーガー屋さんでサーモンのハンバーガーを食べた。

自意識過剰にしては珍しい外出、しかもハンバーガー屋さんでの店内飲食。顛末はこうである。


少食の自分にとって、外食はハードルが高い。

量が予測できず、残すわけにもいかず、大概のフードコートは騒がしいからだ。


だが昨今のあれやこれや(前回までの話を参照)を経て、たまには外食してみようと思い立った。

まずネットでメニューを調べた結果、どうやらハンバーガー屋のホットドッグくらいならば大丈夫そうだという結論に至る。

しかし、いざレジに向かうと、貼られているメニュー表にホットドッグが見当たらず、内心めちゃくちゃ焦った。これではレジに来てから悩みまくる迷惑なお客ではないか。「こいつ、なんで決めてこないんだよ」とか店員さんに思われること間違いなしである。慌てて、デカデカと載っていたサーモンバーガーを指さした。


紆余曲折を経て、得たサーモンバーガー。

隣の隣くらいに座る女子高生たちの視線を気にしながら、かぶりつく。平日の昼下がりにひとり、バーガーに食いついている自意識過剰。

おいしかった。完食した。

たまには外食してみるもんだと思った。


そんなしょうもない自分の気持ちで、今回は終わりとする。これを読んだあなたも、おいしいもの食べてくださいね。

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