第4話 あれができない、自意識過剰

自意識過剰ゆえに、できないことを挙げていく。自意識過剰ではない人にとっては驚くべき話かもしれない。が、とうの本人にとっては重大なことである。死ぬまでにはやってみたい(やらなくてもいい気がする)。


髪を染める。

染めた結果、何かしらの変異を起こして、髪が赤くなったり青くなったりしたらどうしようと思う。思ったより茶色になりすぎたとか、そうなったらもはや働けぬ。働けるけども。


テイクアウトの飲み物を飲みながら歩く。

まず器官が弱い自負のある身としては、普通に飲むだけでも器官に入る。むせる。飲みながら歩くなど、普通の人が逆立ちしながら歩くようなものである。私は飲みながら歩くこともできなければ、逆立ちもできない。


スーパーの棚の前で悩む。

棚の前を占領してしまうことも苦手だし、まず人前で悩むことが苦手だ。「こいつ、何と何で悩んでるのか?」などと思われたら終わりである。逆に、スーパーの棚の前で悩んでいる人や、お菓子を買ってくれないかぎりは座り込みで意志を表明するお子は微笑ましく思う。


スマホショルダー。

絶対スマホ落とす。落ちる。そもそも、外出している最中にスマホを触る動機がないし、滅多に外出をしない。最近のテレビで「電車でスマホを触ってない奴はヤバい」と言っていて、私は心底恐怖した。電車でスマホを触ったことがない。


立ち読み。

立って読むことで、あるいは無銭で本来有料の創作物をたしなむことにドーパミンが出るのだと思われる。私は、お金を支払い家で好きなときに読むことでドーパミンが出ると調査済み。


他には、試着、外食、海外旅行、歯医者で口を大きく開ける、パジャマでコンビニやゴミ出しに行く、クレジットカードを作る、駄菓子の大人買い、推し活、自撮り、フリマアプリで売買……など。「できない」の根底には自意識過剰が潜んでいて、おかげで私の生活は毎日、起きて食って本読んで書いて食って寝る、のサイクルで成り立っている。仕事がないと、本当に上記のサイクルで休みが終わる。省みる必要が大いにある。


それはそうと、最近書いている小説はどれもいい感じに執筆できたので満足である。できないことが多かろうと、自分にとって「小説を読む/書く」というひとつの事柄ができていれば、もうすべて不要な気がしているこの頃。


小説を読んでいる間は自意識のことを考えなくて済むし、小説を書いている間は自意識のことしか考えなくて済むので楽なのだと、最近気づいた。

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