第7話 波乱の舞踏会と謎の男
ルヴァンが街から帰ってきたその日の夜に、親族の舞踏会に行くことが予定されていたため、シャルテは不服そうにドレスを身に纏う姿があった。
しかし、以前のようにつまらなそうではなく、またあのホーンズと会えるのかと思うと心なしか楽しみで仕方がなかった。
会場では大勢の参加者がごった返していた。
そこには知り合いや友人達も居る中、もちろんクラーンも見かけてしまった。
この間の告白されたのを思い出してしまう。
“シャルテ、俺はシャルテが好きだ”
「うぅ…気まずい…」
「…シャルテ!」
シャルテは気付かれないようにその場から離れることにした。
クラーンはちょうどシャルテが立ち去る後姿が見えたので呼び止めたが
いかんせん、人が多いため人混みにのまれて行ってしまった。
そうこうしているうちに舞踏会が始まる。
参加者は室内でダンスを楽しんでいた。そんな中シャルテは人の多さに息苦しくなり外の空気を吸おうと思い、舞踏会を抜け出して噴水広場で一息ついていた。
「はぁー…人が多すぎるよ、もう。そういえばホーンズ・サヴィナ様、お見かけしなかったけど、来ていらっしゃらないのかな…人が多すぎて探そうにも今回の舞踏会は仮面舞踏会じゃないから目印になるものもないし…てかそもそも、仮面外してたら分からないよね…」
残念そうに肩を落とす。すると、突然シャルテに声が掛かった。
顔を上げて呼ばれた方を見るとそこには
「ウエンディ」
「やぁ、シャルテは舞踏会に参加はしないのかい?」
「なんだかそんな気分じゃなくて…」
「ねぇ、シャルテ、その、この前の話のことなんだけど」
「この前の?あぁ…」
「その…ごめん!僕、どうかしてたみたい…」
「急にあんなことされて驚いたけど…何かあったの?」
「それが…あ、肩に木の葉がついてるよ…取ってあげる」
「え、ありがとう」
そう言ってウエンディはシャルテに触れようと手を伸ばすと同時に、
ウエンディの目の色が変わる。その瞳を見てしまったシャルテは突然脳に強い衝撃を食らったかのようにクラッとして意識が
「ふふふ…これで僕のモノだ」
力が抜けたシャルテの体をウエンディは支えながらもシャルテの首についているチョーカーに手を伸ばす。
バシッ!
何者かに手を払い除けられる。そこには仮面を被った男がシャルテを抱きかかえて距離を取る。
ホーンズは意識が朦朧としているシャルテ抱えそっと噴水の近くにあるベンチに寝かせた。
「あ、ホーンズ、さま…」
意識のはっきりしない中シャルテはホーンズの姿を捉えた。
そしてそのまま意識を失ってしまう。
ホーンズは立ち上がり、ウエンディを睨みつける。
「ふぅ…またですか。なんなんですか…僕の邪魔ばかり…」
ウエンディはほくそ笑むとスゥッーーー…と瞳の色が変わる。
ホーンズに向けて手を翳すとウエンディの影が形を変え、
無数の手の形へと変化した影はホーンズやシャルテに襲い掛かる。
避け続けるホーンズだが、シャルテを庇いながらでは思うようには動き難いのは確かだった。
「くっ…」
「いつまで持つかな?早く渡してくれた方がラクなんだけど。どうです?素直に渡してくれませんか?まぁ、無理強いはしませんよ。僕は紳士なので。
ただ、貴方が拒めば、身の安全は保証できませんけどね」
虚弱体質のウエンディが信じられないほどの身体能力の向上に驚いたホーンズはウエンディに間合いを詰め寄られるのを許してしまう。
「!!」
だがウエンディはホーンズに攻撃を与えずそのままスルーし体を翻してシャルテの方へと矛先を向けた。
ホーンズが気付いた時にはすでにウエンディはシャルテに攻撃をしようと手を翳す。
「しまっ…!」
ザシュッ!
「っ…」
ホーンズがシャルテを庇う様に二人の合間に割って入ると影がホーンズを襲った。
「ねぇ…ルヴァン・アーバント!」
その衝撃に仮面が割れた。
そこにはホーンズではなくキッと睨みシャルテを抱えて距離を取るルヴァンの姿があった。
そっとシャルテを降ろして、ボロボロになったホーンズの変装を解く。
バサッ
「わざわざ変装して社交界に現れるなんて、よっぽど大切なんだ?」
「お嬢様を守るのが私の務め」
「あ~いいなぁ、僕にもそんな忠実な使用人が居てくれたら良かったのに。
僕のところの使用人達にも貴方みたいに主人への忠誠心を見習ってもらいたいものだよ。あぁ、でも一人は抜かしてだけどね。
そうだこの機会に紹介するね。僕の使用人のルイス!
…そして、僕をこの世界に招待してくれた人物だ」
「っ!」
「どうぞ、お見知りおきを、ルヴァン・アーバント。
貴方の噂はかねがね耳に挟んでおりました」
「…(なんだこの男、なにか違和感を感じるな…)」
ルイスと呼ばれた男はルヴァンに一礼して顔を上げた瞬間、もの凄い速さでルヴァンに近付き踵を振り降ろした。攻撃の速さに一瞬たじろぐが、瞬時に態勢を整えたルヴァンは拳を前で構え、
ルイスはニヤリと口角を上げると両者の戦闘が始まった。
「いいぞ、ルイス」
ウエンディはその隙にシャルテに近付く。
ルイスに気を取られてしまい、シャルテの側にウエンディを近付けさせてしまった。
闇に包まれたオーラを持つウエンディはシャルテの首についているクリスタルに手を掛けるが、闇の力に反応してクリスタルがウエンディを拒むようにして弾く。
「っ!素手がダメなら、こっちでどうだ!」
「やめろ!」
ルヴァンはウエンディを止めようとするがルイスが間に割って入って来る。
先程まで明月が輝き照らしていたはずだった空は暗雲が立ち込み始めた。
ウエンディは剣を振り降ろした。
「いただくよ…!」
しかし、先ほどと同様に剣も弾かれてしまう。
「っ!聞き分けが悪いな、このクリスタルは…こんのっ!!」
ウエンディは闇に包まれた力で無理やり力づくでクリスタルを奪おうと、
もう一度剣をクリスタルに近付ける。
「ぐっ…!あ、と少し…!」
「やめろぉおおお!!」
ルヴァンの叫びも虚しく、剣先にクリスタルが当たり砕けてしまった。
剣先はクリスタルに当たったことで剣の刃はシャルテの首筋の横で地面に突き刺さった。
「や、った…やっと手に入れたぞ…!」
「待て!!」
ルヴァンの制止の声も聞かずにウエンディはチョーカーを手にし、
ルイスはシャルテを抱えて二人は何処かに消えて行ってしまった。
「そんな…シャルテお嬢様…!」
シャルテを求めた手は虚しく空を掴みルヴァンは脱力して肩を落としてしまった。
そこへシャルテを探してここまでやってきたクラーンに遭遇する。
「クラーン様…」
「シャルテを見なかったか?」
「申し訳ございません…実はーーー…」
ルヴァンから事の経緯を聞いたクラーンは目を丸くして驚いた。
そして
「なんてことだっ…!どうにかしてシャルテを助け出せないのか?」
と二人がシャルテの救出に頭を悩ませていると、
先程まで暗雲の分厚い雲が流れていたはずの雲の切れ間から月の光が零れ始める。
「あれは…」
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