第3話

 男の名はカミュ。数々の極悪人を倒し。名実ともに輝かしいが、カミュはある男に狙われていた。モーリス・ルブラン。またの名を”怪盗紳士”かつて、コナン・ドイルとも戦ったことのある。伝説の大泥棒である。彼はのちに子孫を残し、その子孫も名をとどろかせることになるが、また別の話である。

 「やつは俺の命は狙ってこないだろうが、俺の命に次に大切なものは狙ってくるはずだ。」

 カミュは寝ずにその晩を過ごした。そして翌朝。

「やった。作品は盗まれてないぞ!!」喜んだのもつかの間、予告状と同じ素材の紙が置いてあった。そこにはこう書かれていた。

「ご機嫌麗しゅう。カミュ殿約束の品物は頂戴させていただきました。ご協力ありがとうございます。」

「何言ってやがんだ。こいつ。寝ずにずっとおったんだ。」

「あの男、まさか....」そのまさかであった。ルブランは約束を破ることはない。

よって、間違えたのはカミュの方であった。「明け方、参上する」

時間はいつもよりだいぶ早い時間であった。

「くくく。やられた。絶対に許さん」カミュは短刀と長刀を持って出かけた。


 コナン・ドイルは、ヴィクトル・ユーゴーの足跡と匂いをたどって居場所を探していた。だが、思わぬ場所で、匂いは消えた。

「嘘だろ....」そこには水平線....海が広がっていた。つまり、考えられる答えは一つ。ユーゴーは泳いで海を渡ったのであった。このあたりに、船やヨットなどが使われた形跡がない。少なくとも、ユーゴーは使っていないのである。

 コナン・ドイルは、王様に船を調達するよう依頼した。すんなりと承諾されたのであった。

 三島由紀夫は、剣術を極めるため、吉田絃二郎の元を訪れていた。

「よくきましたな。三島さん。早速剣術に取り掛かりましょうか。」

三島と吉田は木刀を取り合った。防具は一切していない。そして、吉田は

「構えてぇ!!」と声を掛け、「いっやあああ!!」の合図の元勝負の開始をした。

 三島は吉田の刀に合わせた。こっこっと木と木が合わさる音が室内に響いた。そして、横振で、勝負を決めに行った。ぱんっ胴体を衝いたのは.....

「参りました。」三島の方だった。

「ありがとうございます。」


「ユーゴーに挑むおつもりですか?」

「はい。」

「おやめなさい。」

「......。」

「わざわざ死にに行くようなものです。」

「私の死に場所はもう決まっております」そう言って、三島はその場を去った。


「ようやく、見つけたぞ。ルフラン」

「これは、これは、カミュ殿」

「お前が盗んだのだな。家のねずみを」

「ええ。そうです。再びペストが流行っては大変ですから。」

「能力も盗めたはずなのに、なぜそれをしなかった?」

「私は、不殺がモットーですから。」

「なるほど。だが、土足で家に上がり込んだ貴様は殺さなければならない。」

「そうですか。」そういうと、ルフランはマントを体に包んだ。そして、ほどくと、そこには。

「まるで鏡を見てるみたいだな。」ルフランは、カミュそっくりに変身したのであった。

「それでは早速始めましょうか。」先手を打ったのは、カミュの方だった。長刀でルフランの喉元をつこうとしたが、あっさり短刀ではじいた。

「何のつもりだ?手心を加えているつもりか?」

「さっきも言った通り、不殺がモットーですので。」

「声まで俺に似てやがる。だが、感情はマネできてないぜ!!」正中線を切ろうとしたが、

「消えた。」すると後ろから声がした。

「我が正拳をもって貴様を鎮める」

「嘘だろ....」そこには、体格も声もそっくりなユーゴーがいた。

「身の丈をしれい。若人よ」そして、ルフランは、カミュにデコピンを喰らわせた。

「威力はそこそこだな。」カミュはその場に倒れた。

「本物なら死んでましたね。私の力を侮ってもらっても困りますが」


 コナン・ドイルは、フランスに訪れた。”在国許可証”もちゃんと取り、ヴィクトル・ユーゴーの捜索が始められた。勿論、この二人にも連絡を入れた。三島由紀夫とヘミングウェイである。

「どうしたんです?その傷は」

「ああ。武者修行中にやられてなあ。とんでもないやつがいたもんだ。」

「相手の名は?」

「言えるわけねえだろ。全く手も足もでなかったんだ。」

「この、ヘミングウェイが全く及ばない相手何て」

「そんなんでヴィクトル・ユーゴーに勝てるんですか?」

「おめえも戦うんだろうが」言えるわけねえよ。負けた相手が二人なんてな。

すると街中で変な動きをしていたコナン・ドイルに、男は話しかけたが、これは、ヘミングウェイも驚かざる負えなかった。

「あんた、探偵さん?」

「どうしてそれを?」

「いやあ。当たった。当たった。やっぱ言ってみるもんだよなあ。」コナン・ドイルは気づいていた。この男は確実に探偵であることを見抜いていた。しかし、俺のように観察眼というものではなく、野生の感と言ったものだろう。

「ん?そっちにいるのは。確か、この間俺に勝負挑んできた奴か!!」

ヘミングウェイは顔を赤らめた。

「やりたくなったらいつでもおいでよ。」

「何か用ですか?」

「とぼけても無駄さ。あんたらを止めに来たんだ。」

「え?」

「あんたら、ドストエフスキーかヴィクトル・ユーゴーに会いに行くんだろ?分かるよ。あんたらの目を見てたらな!!だが、誰が行っても結果は同じさ。」

「全員死ぬってことか?」

「そういうことさ。」

「そういうあんたこそいったい何者だ?」

「俺かい?俺はシェイクスピアだ。」

 コナン・ドイルは全身の血の気が引いていくのを感じた。最悪だ。ヘミングウェイが負けたのも納得がいく。

 ヘミングウェイも同じ事を考えていた。俺が負けたのは、その二人ってことか?この世界にバケモノが3人もいるのか?いや、もしかしたら他の文豪も...いや、

「じゃあ、そいつらを倒せば、世界でかなり強いってことですよね?」

「まあね。」

「じゃあ行くしかないですね。」

コナン・ドイルとヘミングウェイは思った。何言ってるんだこいつは。しかも、今しゃべっている相手はシェイクスピアだぞ!!

「君、人の話聞かないタイプ?」

「どっちかと言えば」

「後ろの2人は行く気無さそうだけど?」

「関係ないですね。」

「ふーん。君死にたがりなんだね。まあ人に迷惑を掛けなかったらそれでもいいけど。」そう言って去っていった。

「お前あいつの実力分からんのか?」

「嫌なほどわかった。でも、やることは変わらない。誰であろうと、自分より強い相手を倒すだけだ。」

「そうか。俺も負けねえ。俺が死ぬのは戦場だけだ」

「私は共感しませんがね。でも、ヴィクトル・ユーゴーを倒せるのは、我々以外にいないのですから」

「夢追うものすばらしい!!」突然、セルバンデスがコナン・ドイル一派に話しかけてきた。

「なんや、あんた。」

「柳田國男を起こした男ですよ」

「なんやて」

「なぜそんな危険な男を?」

「ふふふ。そんなに町でだったんばったんやったんでは町の人も怖がりましょう。」

「だったら、どうしろと?」

「コロッセウムに集まるのです。優勝した暁には、チャンピオンベルトもご用意してあります。勿論各国の要人も集まっていただきます。」

「なぜ、そんなことをあなたが?」

「言ったでしょう?”自身の破滅”が私の能力のトリガーだと」

「答えは決まってあります。勿論イエスだ!!」

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