根尾優香(38)

1ヶ月前、この交差点で男の子が亡くなった。


その話を聞いてから、身内というわけでもないのにお菓子を供えに来てしまった。


子どもが死ぬというのは、いつだってやりきれない。私の妹は、まだ中学生だった頃に重い病気で亡くなった。あんなに優しくて、可愛い子だったのに。


手を合わせる。どうか、天国に行けますように。私の妹も、君も、次に生まれてくるときは幸せになれますように。


顔を上げると、そこには男の子が立っていた。幽霊だとすぐにわかる。


その顔は大きくひしゃげて目が飛び出していた。


私はその姿に恐怖を感じながらも、絞り出すように、「痛かったねぇ」と彼の頭を撫でる。


痛かったね。怖かったよね。


どうか、安らかに眠ってください。


どれだけそうしていただろう。


彼の小さな手がそっと私の顔に触れた。小さな手だった。


私も男の子の手に、自分に手を重ねっ、あれ?なんか、力強くない?


男の子の手に、少しづつ力が入るるるっ。痛、痛い。痛いよ。


あれ?彼は私の頭を子どもとは思えないものすごい力で掴むとあれ?あれあれ?そのまま頭を少しづつひねひね捻っててて痛ぐりぐりと首にあたりから嫌な音がするそのまま首がねじれてなんでなんでなんでなんっ


【付記】

6月18日、頚椎を骨折した遺体で発見。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る