ヤバい奴

自分の部屋が一番落ち着く

第1話 中学の入学式

 宮野真央は、流されやすい。その結果やばい奴である。ある日親は言った。


「我慢は良くない。やりたいようにすべきだ。」

「そうよ。なんでも言いなさい。言わないよりは言った方が良いのよ。」


 この場合は、真に受けたというべきだが真央は結果なんでも口に出すようになった。その結果・・・


「1年1組の生徒の名前を点呼しm」

「すいません!!!トイレいきたいです!!!」


周りの新入生が真央の方を見た。真央はそんなことにもお構いなく、「トイレ!!トイレ!!」と声を上げている。それを見た教師がものすごい速さで走ってきた。


「宮野さん!?あなた何をいってるの?一回黙って?お願いだから一回黙って!?」


周りはざわざわしている。厳かな雰囲気は台無しになり、在校生も真央に目を向けている。となりの小学校の時から親友だった原井杏は白目をむいている。原井はいつも真央の尻拭いをしていた。自ら進んでではない。お人良しだったから結果的にその役割になってしまった。


『よりにもよって今なの!?真央のアホ!!』


教師は大きな声でトイレトイレ言っている真央に落ち着くように話しかけているが効果はなく、教師は泣きそうになっている。原井はめんどくさくなり、真央に首に手刀を打って静かにさせた。何事もないように真央を担いでトイレに向けて歩き出す。教師は目を大きくして原井を見ている。


『説明するのめんどくさいなー』


原井はトイレに行って真央に平手打ちして起こした。


「杏ちゃん!!ここはどこ?」

「お前がうるさいから静かにしてトイレに連れてきたの。なんであの場で大声で言うかね」

「トイレに行きたかったから。それ以外にトイレ行くの?」

「にしてもあれは驚く。入学式であれは無い。先生半泣きだったぞ。」


原井は思う。『マジでなんなんこいつ』と。小学校の時はこんなではなかったはずだ。多分・・・原井は自信がなくなった。


『真央がヤバくなり始めたのはいつだっけ?』


原井は考えた。小学生のあの時か?小学校で親と手紙交換してお互いに読みあうやつ。あの時は感動したなとなったが、記憶を整理すると、真央の親と真央が手紙を好感して読みあっていた時の記憶が思い返された。


「お母さん!!ありがとう!!」

「真央うれしいわ。私からも手紙ね。・・・これからは我慢しないことを覚えなさい。あなたは流されてやりたくもないことをやっていそうと思ったの。だからね、我慢しないでほしいのやりたいことは言ってほしいの。いやなことは嫌と言ってほしいの。わかった?」

「うん!わかった!」


『あの時じゃん!絶対そうだよ!あの時ブレーキかけとけばこんなヤバい奴にはならなかったのでは?もう遅いけど』


あの時は友達ながら感動したなと思っていたら、まさかのここでもこんなことになるとは思いもしなかった。あれから小学校では


「先生トイレ!!」


というようになった。あの時は我慢して「お花摘み行ってくるね」と言っていたが、今ではやべーやつになってしまった。そんなことを考えているうちに真央はトイレを済ませたようで、「すっきりしたよ、杏ちゃん!!」と言っていた。

 トイレを出ようとすると水道の前で半泣きだった先生が来ていた。


「原井さん、ありがとうね。先生どうすればよいのかわからなかったの。ごめんね。」

「あれは仕方ないですよ先生。いきなりこんなことになってしまいすみません。」

「先生もびっくりしてしまいました。でも今理解しました。なんで、周りの先生が私のことをかわいそうな人を見る目で見ていたのか。宮野さんが私の担当クラスに入るからですね。」

「本当に申し訳ないです。こんなヤツを担当していただいて感謝します。私も同じクラスなので何かあったら協力します。」


そう原井が言うと教師が目を潤わせながら言う。


「ありがとう原井さん。私は松園怜美といいます。よろしくね原井さん。」

「こちらこそお願いします、松園先生。いろんな意味で・・・」

「そうね、お願いします。」

「杏ちゃん!先生!早く戻るよ!」


原井はイラっとしたが、深呼吸して


「そうだな、戻るか」


そう言って手をつないで会場に向けて歩き出した。その後を追うように松園も歩き出す。視線は感じたが、その後は何もなく、というか真央はやらかさずに終えることができた。原井は胃薬を服用しながら教室に戻った。その後は明日の登校時間の確認や持ち物の確認が終わり帰宅するように言われた。


『何とかなった・・・』


原井はそう考えた。

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