第55話 バカ貴族が盗賊を連れて先回りをして待ち構えていた。
「だから……やめて!まだ夫じゃないし、献上品でも無いでしょ!有り難くもらっておくよ。ありがとございます」
王様から短剣と剣を受け取るり振り返ると、ミリアが嫌そうな顔をしていた。
「……なんなのですか?あのバカそうな貴族は?」
ミリアが不愉快そうに、近くに居た偉そうな王様のお付きの人に聞いていた。
「お見苦しいものをお見せしてすみません……キツく言っておきますのでご容赦ください」
「……別に良いですわよ」
俺達が町に向かう時にも、まだ騒いでいた。
「何故、あの様な者に王族の紋章入りの剣をお渡しに?」
「貴様が知る必要は無い!早く立ち去れ!無礼者」
バカな貴族は、どこにでも居るんだな……貴族を代々継いでいると出てくるんだろうな~初代は手柄を立てて、国王に認められた凄い人でも代をを重ねるにつれてバカ貴族と言われてしまう家名汚しのヤツが出てくるんだよね……
ミリアと腕を組んで歩いていると、疑問に思っていた事を思い出して聞いてみた。
「なぁ~ミリア、そういえば何で王様は剣と短刀を渡してくるんだ?」
初めは感謝されて宝物で褒美として貰ったと思ってたけど、良く考えたら王族の紋章が入った剣や短剣を宝物として配ってちゃダメだろ……?偽物の王族が大勢居る事になって問題が起きると思うんだけど?売り捌いたりして悪用する人に渡ったら大変だと思うぞ?
「それは、剣は国王が次期皇帝として資質や人柄を見て判断をして、ユウヤ様を認め忠誠を誓う意味で献上しているのですわ。王族の紋章の入った短刀は王族の証なので近親者でも、一部の重要な王族しか持っていませんので、この王国でも上位の王族の扱いになりますわ。それに普通は絶対にお渡し致しませんわ」
ほぅ……褒美として渡してるんじゃないのか……なら安心だな。
「ん?……はい?俺に忠誠をって……早すぎじゃないの?ミリアの婚約者になっただけだよね?しかも公式じゃないし。次期皇帝……?早すぎるだろ」
「何を仰っているのですか。もぉ!前に言いましたよね……お父様に認めていただいたと!」
「あぁ~……うん。言ってたね」
「お父様が認めたという事は、公式に認められていますわ」
「そうなの?婚約発表をしてないし、いつでも取り消せるでしょ?」
「簡単には取り消せませんわ。各王国宛にお父様がお知らせをお出しになられましたわ」
「はい?お父さんは嫌がってたんだよね?自分から手紙を出すと思えないんだけど?」
「ええ。わたしが頼んでお知らせを出してもらいましたわ」
ミリアが満足そうな顔で言ってきた。
無理やり感があるけど……ミリアが満足してるなら良いか。お父さんは不満だと思うけど。
町の中を護衛を連れてミリアと歩いていると……先程、王の前で叫んていたバカ貴族が、護衛と人相の悪い集団を連れて先回りして待ち構えていた。
はぁ……。さっきの事の逆恨みってヤツね。相手にしないように他の道から行くか。
「他の道から行くよ」
「どうしてですの?」
「あいつに係わりたくないからだけど?」
「逃げるみたいで嫌ですわ……」
「お姫様が、自ら危険に飛び込んでいくのはダメだと思うよ?皆を巻き込んじゃうし」
「ユウヤ様が居れば安全ではないですか~」
「それで、もし俺が殺されちゃったら?」
ミリアが、それを聞き俯いてしまい小さな声で答えた。
「ううぅ……そんな訳ありませんわ……」
「もしも転んだり、まぐれで斬られたり、気付かない罠が仕掛けてあったりさ」
目を潤ませて、俺を見つめてきて俺の服の袖を握って自分から他の道へ入っていった。
「逃げたわけではありませんわ。あちらの道は害虫が沢山見えましたの。気味が悪いですわ……不潔そうでしたし」
「あ、それ俺にも見えた」
後ろで話を聞いていた護衛やメイドさんが笑っていた。
俺も笑いそうになったけど……害虫が面白かった訳ではなくて、ミリアの負けず嫌いな性格が分かりやすくて面白くて可愛かった。
他の道に回っても、どうせ追いかけてくるんだろ?盗賊風の男達を連れてきたって事は、襲ってくるのは間違いないと思う。脅しだけって事もあるか……
「回避は出来なそうだけど大丈夫?」
念の為に護衛達に聞いてみた。
ハッキリいって護衛と盗賊の実力が、いまいち分からないんだよな。
「盗賊風情に負けるわけありません!」
「いや・・・勝つ負けるじゃないでしょ?ミリアを護れるかだよ?勝てるっていうのは分かるけど、ミリアを護れなければ護衛の意味がないし。盗賊の討伐なら冒険者に頼めば良いだけだし」
「そ、そうでした……」
「相手は護衛が5人、盗賊が20人程だったから戦って勝つのは簡単だけど、ミリアを狙われていたら数が多いし……結構、厄介だと思うよ。まあ……あのバカ貴族は多分、王様の前で恥をかかされたと思って俺に仕返しに来ただけだと思うけど」
「なるほど……。そうですか……ではユウヤ様どういたしますか?」
ん?護衛が俺に指示を求めているの?ど素人の俺に?昨日の稽古という遊びというか……暇つぶしで圧勝しちゃったからか?
ホントなら、ミリアを馬車に乗せてバリアを張って安全にしておいて戦いたいけど……馬車が無いしな。バリアを何も無い場所で使用すると明らかにバリアの存在がバレそうだし。
「狙いは多分、俺だけだと思うから3方向に別れる。まずは俺一人と、王国の兵士に知らせるヤツが二人、後の残りは全員ミリアを死守してもらうが攻撃を受けた場合は、誰か俺に知らせてくれ」
「反対ですわ。何故、ユウヤ様がお一人なのですか!」
「うぅ~ん……大勢いると戦闘の邪魔だし、護りきれないからかな……」
「ミリア様……ユウヤ様の指示に従いましょう」
「分かりましたわ……ううぅ……お気を付けて下さい」
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