第27話 店を1日休んだら行列が出来ていた。
ミリアがメイドを呼んだ。
「今日は、早めの朝食をお願いします」
「はい。かしこまりました」
「悪いね……」
一応メイドさんに謝っておいた。
「ユウヤ様は謝ることは無いのですよ。メイドなら主の事を考えて、夕食を取らずに寝たら朝早く起きてお腹が空いてるくらい分かり切っていますわ。そんな無能な使用人は雇っておりませんわよ」
そうは言われても、向こうの世界では相手を思いやる心の美徳っていうのを教わってるし根付いてるんだよね。
自分の都合で、相手の予定をしていた時間を狂わせたんだから謝らないとって思うよなぁ……それが仕事だとしてもさ。
ミリアの言う通りお礼を言われたメイドさんが驚いた顔をしてたけど。メイドさんとの付き合い方が未だに分からない。けど俺は無神経な人間にはなりたくないので……迷惑が掛からない程度に自分流でいかせてもらうよ。
「今日のご予定は?」
「お店に行かないと不味いよね。昨日は休みにしちゃったし」
「そうでしたね……」
ミリアが疲れた表情でメイドさんを再び呼んだ。
「従業員の方の用意は出来ているのですか?」
「はい。勿論でございます」
「え?もう?」
「従業員は国王の紹介と、わたしの使用人の中から選びましたから優秀で信用できる方達ですわ」
「それなんだけどさ。女性の護衛の人は店の従業員になりたいと思ってないかな?」
「さぁ~どうでしょうか。どうなのです?」
ミリアが女性の護衛の方を見ると近寄ってきた。
「はい。お呼びでしょうか?」
「護衛の仕事はキツイでしょ?店の従業員になって貰えれば助かるし時間も出来て……デューイさんと会える時間も出来ると思うんだけど?」
「それは……」
ミリアの方を向いて言いづらそうにしていたので助け舟を出した。
「ミリアも結婚相手を探さないとって心配してたし。ね?」
そう言うとミリアの方を向いた。
「そうですね。良い話じゃないのかしら?なんなら相手の方もお呼びして、この町で暮らしたら良いのではなくて?お仕事もお店の品出しのお仕事もありますし。二人が居ればお店の護衛としても十分に役に立つと思いますし」
「それは……デューイさんとお話をしなくては決められませんので……」
っていうか、ミリアの護衛をしていたら24時間付きっ切りなんだろ?それじゃデューイさんと話し合いも出来ないんじゃないの?どっちにしても、このまま護衛を続けているより従業員になった方が良いと思うけど。
「その方ならお店の方に来ていると思いますよ。確か……お店の警備として今日、来ると聞いていますよ」
「ホントですか?あ、失礼しました。……相談をしてみます」
朝食を早めに食べて早めにお店に向かうと……
うわぁ……昨日から並んでいるっぽくて、先頭の方は店の前で寝転がって順番を待ってるし。長い行列が出来てるし負傷者も並んでるし重傷者もいるよ。一日だけ休んだだけで、この状況になっちゃうって病院は機能してるのか?ここは病院じゃないぞ?薬屋なんだけど……
「ミリア病院は、どうなってるの?」
「……知りませんわ。どうなのです?」
ミリアがメイドさんを見るとメイドさんが答えてくれた。
「病院は混んでいて治療時間が長く、効果も薄く病院によっては……全く効果が無い薬を売り付ける事もあるようでして……それなら効果のある薬屋で始めっから購入をした方が良いのでは?と……」
「それって……俺が恨まれる感じになっちゃうじゃない?明らかに患者が俺の店に偏って集まっちゃってるよね」
「はぁ……そうですわね。ダメな医師は頭もダメなので、ちゃんと病院が機能していれば問題が無かった事には気づかないと思いますわね。一度、医師のギルマスとお話をしなくてはいけませんわね。本当は国王の仕事ですわよ。もぉ!でもユウヤ様の為ですもの……頑張りますわ」
店を早々に開けて販売を開始をした。俺は列に並んでいた重症者を優先して料金を先払いで回収して治癒薬を渡していった。
別に貰わなくても良いんだけど……噂が広まると病院に更に恨まれてしまう気がするし、他の薬屋等からも恨みを買っては更に面倒が増えるからなぁ。そりゃタダで薬を貰えると分かれば大量に患者が押し寄せてくるのは分かりきってるし。
一通り傷の重症者を見て回り治療を終えると、店の部屋に戻り休んでいると店の方が騒がしくなった。
ん?……またお貴族様か?しつこいなぁ……
店の方に出てみると貴族風の男が護衛と兵士を連れて騒いでいた。
「おい!商業ギルドと薬師ギルドの販売許可は取っているのか?」
は?そこまで許可は取ってないけど?必要なの?そんなに面倒なら辞めちゃっても良いんだけど……なんだか面倒になってきたな。俺は楽しく暮らしたいだけだし……。金も結構貯まったし……国王というか義理の父親に直接、買い取ってもらえば現金収入が得られるしバカ貴族に絡まれる事もなくなるだろうし。
「あ、許可は取ってないですね」
「ほぉ~取っていないのかでは違法だな……コイツを捕らえろ」
丁度、良い所に王国の兵士が来てくれて俺が捕らえられてる所を見つけて慌てて来てくれた。
「おい!何をしている!!」
「貴様には関係の無い事だろ!コイツは無許可で販売をしているんだぞ。違法だ!」
「国王様からの許可が出ていてもか?」
「はぁ……?国王様が許可を出す訳が無いだろ!平民の薬屋ごときに!」
「何を言っているんだ?平民では無いぞ?王位継承権第3位の王子殿下だぞ!」
は?俺は王族なだけで王子じゃ……あれ?王様の息子だから王子か……今、気付いたよ。ってか王位継承権も付いてきてるの?俺が王子か……実感が全くないんだけど。
「王子殿下への不敬は貴族でも見逃すわけにはいかないな。コイツを捕らえろ!」
デューイが部下の王国の兵士に命令を出すと、バカな貴族が連れてきた私兵が寝返って参加をして貴族とお付きの護衛を捕らえた。下手に抵抗をして剣を抜いた時点で反逆罪確定だしな。
「コイツが王子だと!?平民服を着て薬屋をやってる王子なんかいるか!!」
「あなた……死にたいのかしら?それ以上ユウヤ様を侮辱をするならば許しませんわよ」
警備兵の詰め所の近くだったので、すぐに警備兵が集まってきて貴族は連行されて、デューイが近付いてきて俺に跪き頭を下げた。
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