第11話 薬屋が順調に売れだすと問題が起こる。
護衛を見ると目を閉じてイヤそうな表情をしていた。そりゃそうか……護衛が大変だもんな。
「いや。止めておいた方が良いじゃないのか?護衛が大変そうだし?」
俺がそう言うと、ミリアが護衛を振り向いた。
「何なのですか!その表情は!お嫌でしたら付いてこなくても結構です。ふんっ!」
ご機嫌斜めになってしまって警護が慌てた様子で言い訳を始めた。
「ち、違います。少し訓練不足で体力が無くなっているようでして……少し疲れていただけです。決して嫌な訳ではありません!すみませんでした!」
「知りませんわ。ご自由になさって結構ですわっ」
これも俺のせいなのか?そこまで面倒を見てられないぞ……嫌だったら付いてこな来なければ良いんじゃないの?で代わりの者を護衛に付ければ良いじゃん。それかミリアを説得すれば良いじゃん。
「それじゃ俺は帰るよ」
「どちらにお帰りに?家は無いと仰っていましたよね?」
「あぁ〜家は無いけどテントで寝泊まりしてる」
「テントですか?それでしたら、うちに是非お越しください!部屋も空いていますし」
「いやぁ……迷惑になるし悪いよ」
「……誰の迷惑になるのですか?」
「えっと……使用人の方達のさ……」
「使用人ですか?それは使用人達のお仕事ですわっ。迷惑と思うなら仕事の放棄ですわね……ですが、うちにはその様な使用人は居ませんわよ」
メイドさんが慌てた様子になった。ミリアにそんな事を言われれば仕方ないよな。
「是非お越し下さい!ご迷惑だなどと思う使用人はいません」
ミリアの独断で勝手に決まり屋敷に、しばらくお世話になる事になった。
翌日……
店舗へ行く時にメイドさん、護衛の人達は当然良い顔はしていない……自分達の主が知らない人の、しかも平民の仕事の手伝いをしに向かうのだから良い気はしないのだろう……でも、俺は頼んだ覚えは無いぞ。
お貴族様のお嬢様が平民の仕事のお手伝いだし、主が手伝いをして働いていれば……メイドさんと護衛も手伝わせる事になるはずだしね。
だけど……俺は何回も断ったよ?使用人たちも護衛の人達も聞いてたよね?
初日から大忙しで用意した在庫がなくなり、途中で生産をしながら販売をしていたけど、それでも追いつかなくなり早めに店を閉めた。
ちなみに使用をしなければ治癒薬は1週間で効果が無くなり消滅する様に出来ている。大量購入して高値での転売を防止する為だ。店にある商品を並べている棚には時間で劣化を防ぐ機能が陳列棚に付いているので棚から取り出してから1週間の期限だ。
「いやぁ……スゴイ売れたね」
「さすがですわ。ユウヤ様がお作りになるお薬は最高ですからね。売れない訳がありません!しかも効果を落としてあってですからね……スゴイです」
「ミリアにスゴくお世話になっちゃって悪いね」
「お役に立て嬉しいですわっ♪」
実際の所……生産が追いつかなくなったと言うよりも手伝っていてくれていた護衛、メイドさん達が疲れてきていたのでと言った方が正しいけどね。
当然、給金はコッソリと払ったが拒否されたけど……ミリア経由で渡した。
ミリアが懐へ入れる事は無いので、その心配は無い。
本職とは別に給金が出ることが分かると……翌日から気合が入り皆、頑張って売ってくれた。
男性陣はポーションの補充をしてもらい女性陣は会計と接客を任せて、ミリアは司令塔になってくれて俺はミリアから言われた物の生産を居住スペースで箱詰めしていた。
午後になったが落ち着くどころか……更に忙しくなってきた……
朝は冒険者が依頼に出掛ける時に買いに来るし。昼間は傷を負って早めに帰ってきた冒険者が買いに来る。夕方からは引き続きケガを負った冒険者が買いに来るのと、朝早くから出掛ける冒険者達が明日の準備で買いに来るのと、仕事終わりに美容薬を女性陣が買いに来るので更に忙しくなっていた。
これって製品が行き渡って落ち着くって事がないよな……って事は……これがずっと続くのか?嬉しいけど疲れるな。あれ?俺のスローライフは?
初日の半日で店舗代は稼げていたし1日で1ヶ月分の生活費以上稼げていたので月に一回に店を開ければ暮らせるんだけどなぁ。
これじゃ仕事人生になってしまう……せっかく異世界に来たのに。
あ、従業員を雇えば良いんじゃないの?それで馴れてきたら店を任せれば良いじゃん。
ミリアの紹介をしてくれる人なら安心できそうだし……
お店で手伝ってくれていたミリアを呼んで相談してみた。
「なぁ~ミリア信用できるヤツに店を任せたいんだけど……良い人紹介してくれないか?」
「そうですわね……これじゃユウヤ様と落ち着いてお話も出来ませんし……」
ミリア話をしていると外が騒がしくなった。
「店主はいるか!?」
うわっ。初のクレームか?傷が治らないとかか?治らない訳が無いんだけどな……もう偽物が販売されてる?
店に出てみると騎士風の男が5人と偉そうな貴族風の男が1人居てお客もビビってるのか離れて距離を取ってる。
「何でしょうか?」
「誰の許可を得て薬を売っているんだ?」
は?許可……何も考えてなかった……誰に何の許可を貰えば良いんだ?薬師ギルド?商業ギルド?町長?領主?国王?
「いえ……まだ許可は得ていません」
「では、違法だな……コイツを捕らえろ!」
2日目にして閉店か?だけど必要としてくれていたお客さんが、それを聞いてキレた。
「ふざけるな!どうせ領主が金の匂いを嗅ぎつけたんだろ!」
「税金とか言い出したりして薬の値上げされたら困ります!」
不機嫌な顔をしたミリアが手紙を偉そうなヤツに渡した。
ん?また手紙か……色々と用意してあるなぁ……
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