『人間変性症』 下の10


館長

 『さきほど、アナウンスさんが、概略をお話ししました。で。ちょっと付け加えます。わたくしは、べつに、人類がごき人類に勝るとか劣るとかは言っていません。ひとつ、確かなのは、今の地球では、旧来の人類は生きられないのです。』


船長

 『全滅ですか?』


館長

 『そういうわけでもなくて、じつは、三十億人は、生きているとも言えます。』


マーダー捜査官

 『なんと! どこに?』


館長

 『ここです。』


スリラー捜査官

 『はあ?』


館長

 『この地下には、立ち入り禁止の領域があります。そこには、三十億人分の人類のDNAなどの情報が保存されていて、やろうと思えば、すぐに、再生されます。』


船長

 『コピー人間か。』


館長

 『そうです。しかし、再生したら、生き物ですよ。』


マーダー捜査官

 『それは、どうするつもりなんですか?』


スリラー捜査官

 『地球をまた、占領する?』


館長

 『まさか。じつは、火星に移住する、という計画がありました。ご存じでしょう。』


船長

 『それは、知っています。』


館長

 『しかし、失敗したのです。といいますか、間に合わなかったのですね。こうした事態になる、そうなるだろうという予測は、かなり、むかしからありました。で、地球から移住する計画を作りました。それは、西暦1960代の初めからありましたのですわ。』


船長

 『ポアロン計画と同じ時期に?』


館長

 『と、いいますより、同じものなのです。‘’地球脱出委員会‘’は、1955年に正式に設立されました。もちろん。秘密裏に。西側も東側もなかったのです。みな、一致していました。地球は、遠からず住めなくなると。』


マーダー捜査官

 『それは、信じがたいな。』


館長

 『まあ。しかし、一部の人類は、そう、確実に予測できていました。それは、太古の金星からきた、なぞの物体が、大西洋から、発見された、からなのです。』


マーダー捜査官

 『ほう。』


スリラー捜査官

 『あなた、信じやすい。明らかに、うそよ。』


マーダー捜査官

 『なんで、明らかに、なんだい?』


スリラー捜査官

 『わたしは、政府の極秘情報もみることが出きるけど、そんな話しはないわ。そこまで、大きな話ならば、‘’ごき開祖録‘’にもあるはず。でも、‘’開祖録‘’には、人類のことさえ、ぼぼ書いていない。それに、船長さんは、遠い宇宙から帰ってきたんでしょう。失敗したなんて、考えにくいわ。』


マーダー捜査官

 『その資料はね、実はね、かなり新しいんだよ。後から、任意に作られたんだ。人類のことは、書いてあったが、削除されたんだよ。意図的にね。まあ、ほんとのこともあるだろうけど、かなり疑わしいよ。』


スリラー捜査官

 『少数意見よ。』


マーダー捜査官

 『少数が正しいこともある。』


配膳ロボットさん

 『お待たせいたしました。前菜です。『月の養殖あわびの酒蒸し』です。』


船長

 『そんなもの、なんで、月にあるんだ? たしかに、話がちんぐはんぐだな。たしかに、冷戦はあった。歴史的事実なんだ。』


マーダー捜査官

 『ほう。いや、うまそうだな。』



      🍲

      

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