素が弱い奴がイキったところで、バグキャラには勝てない。
国家の最北地に集められしは黒い軍服が大半。
好きでも無い事を生きるために強いられし負け犬達が、死んだ目でこなした仕事の成果を着こなすは戦士達。
表舞台にあがる選ばれし者と、舞台裏でコソコソする存在……他が憧れし方は前者である事など火を見るよりも明らか。
軍の大半は、否九割はモブやザコで構成されるのは当然。
野心や欲だけは人並み以上でも実力がなければ、誰もが羨む少数派になれないのは当たり前である。
まぁ、誰にも羨ましがられないような低次元の少数派ではあるのだが……
そんな役名無しのカス共を率いるは当然精鋭。
即ちイビルディア帝国が、諸国に振りかざす暴力の代名詞達が集結。
彼等の襟では、国際法に定められた銀色の階級章が光る。
「畜生、俺達が先陣の栄誉をいただければ混血児部隊以上の成果をあげるのに!」
この時代に暴力と悪意を撒き散らす病原達は時を待つ。
世界全土が自分達と同じ習慣を尊び……なんて嘘奴隷共の価値観を破壊する搾取の日々を。
乱世は無慈悲で残酷だが寛容にして平等である。
事実、物語の主人公は、憎まれっこ世にはばかるの真理に触れてから、他を殴り飛ばし道を開けさせ……己の存在を他者の脳裏に刻ませた。
男女問わずして、記憶領域に限界がある以上どうでもいい格下等覚えない。
「ベルフェゴール大将の甥っ子だから完全にコネだよ。神の血?貴様は帝国が誇りし唯一絶対なる神に不手際があったと申すか!!!だからあれは東の血を引いている紛い物の猿なり!」
そんな陰口の中でサタンの血を引いている故か、ソロモン七十二柱が家の当主故か、否両方たる故白い軍服に袖を通すはアッシュが部下を引き連れ堂々と前進。
「アスモデウス大佐到着されました。」
同業者の目を引く存在の階級章は銀色に三本線プラス五つ星。
まばゆいばかりの実力を前に、否帝国が期待する若手のホープに対して……モブは当たり前のように皆が道を譲った。
アッシュは、はっきり言って出背コースを爆進中と表現するのも愚かな程に早い。
まぁこれより圧倒的に早い記録を叩き出す奴がいるのだが、彼が史に名を刻むのはグレテンと人外の方である。
「あのさる……もといあのお方は今回が昇格戦だろ?嫌だ嫌だこっちは少佐星四どまりなのに……悲しい」
「十中八九今回で少将になるだろうな。前の戦いで武功が足りずに最年少記録を逃しているからな。はぁ、俺も早く階級をあげたいな。」
「ええ、じゃあもう影口でも東の猿とか言ってはいけないか……純血のイビルディア貴族として悔しいよ。」
貴族の子息は少佐星一からスタートという、いつの時代も変わる事が無い!親のコネが、圧倒的な七光がもたらす圧倒的なアドバンテージを加味しても、大佐星三までは最年少記録という圧倒的な昇格スピードは、嫉妬と羨望を同業者に思わせ……これでマイナー止まりって乱世は凄いな。と治世人に思わせるには充分な実績。
というよりも資料が少なすぎるのが実態。
シッカリと本国に祝福される程に名家の妻がいない男の武勇伝等、残念ながら後世には残らない。
彼等は結果を出すまでの過程が楽しいのであって……そこから先はどうでもいいのだから。
そんな猛る雰囲気の中に、馬鹿みたいなサイズの大樽に入った酒が、死んだ目をした連中の頑張りによって到着。
戦場に向かう雄達に振る舞われるモノと文化は、古今東西異世界であろうと変わらない。
そんな重量物は大の男四人かかりで持ってこられ、各隊へと……しっかりと階級順に手渡される。
「あぁ、このくらいなら俺一人で持ってるんで……結構重いけど鍛錬だと思って運ぶよ。お前ら手抜いてるだろ?これより先は三人で持て!いいな!」
そう口にすると混血児部隊を率いるアッシュは、己が力を誇示する様にそれなりの膂力を見せてのけた。
「「「ウオオ!。流石は我らが主、途中から割って現れた分際で武と暴を持って我らを従えし者!!!」」」
当然、これ見よがしに混血児部隊は誇らしく騒ぐ。
自分より優れた者に、素直に敬意を払える事が男の美徳……という化けの皮。
他家のいけ好かない坊っちゃんと、純血である事を鼻にかけるいけ好かない部隊の顔を屈辱に染め上げるため大声を上げた。
それは優れた他人に自分との共通事項を見つけ、己が手柄の様に振る舞う人間の悪癖。
「へえ、アスモデウスの坊っちゃんは調子がいいな〜。本当に努力の色を感じ取らせてくれる……それに比べて我らが主は」
部下の見据える先には筋肉ダルマの巨漢。が愛する妻と離れ離れにされたイライラをアルコールにぶつけていた。
それはもう酔えない事など分かっているのに、とにかく飲むというやけ酒状態。
「全くだよ。
人外の膂力を持つ彼は馬鹿でかい酒樽を頭上に逆手で軽々と掲げ、中身を体内へ悠々と注いでいく。
モブが行う下衆の勘ぐり等、どこ吹く風。
お助けキャラはただ、ひたすらに時間をつぶす。
「地上最強の男は誰か?と問われば全員がマーク殿の名を呼ぶ世界にしなければなりませんのに?どうしてこの程度で満足しているのですか?一度明確に掴んだ最強の座に未練は無いのですか?」
兄弟子から預かっている書記官の言葉に、オレが欲しいのはベルの寵愛だけだから。と弱者の期待や夢など、鼻で嗤わうは将官服纏いし絶対強者。
欲しいモノが手に入った男の人生目標は、当然次のステップへ……無論それは互いの血を引く子供である。
ライフステージが変化しない人生等、ただの現状維持……いや周りが成長してる分無様に置いて行かれているだけであろう。
それぞれが好き好きに……下の者がかしずきながら注ぐ酒を身体にいれ、上役達は昂揚感にみたされる。
祖国で最後に飲む苦味……になるかもしれない飲料を堪能するのに、年齢などという無粋なモノは関係ない。
アルコールによって進軍を前にした緊張感は、良くも悪くも少し薄まる。
空が瑠璃色な夜明け前。
誰かが口にする、気は満ちた。という言葉。
「さて最高の女を歴史に刻むため、己が欲望を満たすため全員オレについてこい!おこぼれはくれてやる!」
義父と師の仕込みを知っている大将のわざとらしい檄に対して吠えるは軍人達。
猛る男達が目指すは神話の時代から因縁深い中央。
──暴力によって乱世を動かすはイビルディア帝国。
イカれた思想によって歴史から名を消すはガザール大公国。
この程度の事柄、治世を生きる人間なら義務教育で習う。──
一方その頃、西の地即ちグレテン王国ではそれなりの問題が起きていた。
いやまぁ領土問題故に激マズといった方がいいか。
「申し上げます!ハンバーガーグ領グラタンドリアの地にて暴動が起きました。」
えぇ!誰を行かせればいいんだ?という声を上げるのは文官。
はっきり言えばこの時代は聖帝の出現によって、植民地や従属国がそれはもう大国にバンバン謀反を起こすのが当たり前な時代。
そんな事もあり、動ける武官や軍人が余ってる等という贅沢はありえない。
そうでも無ければ最終盤面が、イビルディアによる一強他弱状態に等ならない。
次点の国は、何やっていたんだ?の疑問には現状が答え。
まぁ、ハッキリ言えばグレテン王国の運営は火の車。
ネルソン元帥。という、疲れきった女王の言葉と視線は老いた超人の方へ。
それはもう、ここでうてる手はこれしかない。と全員が分かっている程の定石。
「嫌です。儂は首都ドンロンの防衛以外は死んでもやりとうありません。何ならソレすらしません……悪いか?あんだけの仕打ち受けたら当然だよな?一生恨んでやるかならな!」
姓と役職で呼ばれた老人は、王族に対する圧倒的な不信感から堂々と拒否。
これは不敬罪だろ。と皆思うだろうが、彼に勝てる個人か軍勢があるなら……尚武の国は至強の国と今すぐ最終戦争をおっ始めているであろう。
「どっかの馬鹿王子が下々の娘を選んだせいで……あぁあグレテンはこれで終しまい。はぁ儂は王族の血を引くひ孫を可愛がりたかったのに……ひ孫に世界全土を支配させたかったな〜!」
孫娘を王妃に選ばなかった事典で、グレテンに対する超人の忠誠心等とっくの昔に消し飛んでいる。
何なら自分が持つ領地と権威の保証プラス息子の敵、すなわち暴魔の首さえオマケでもらえればイビルディア帝国に降伏してもいいとすら考えていた。
当然、それを察せない馬鹿は玉座におらず。
当然、その現状を覆せる程の傑物は王位におらず。
「そうか、では誰か。文官でありながら武功も欲しいという物好きは……いないよな。いるわけないよな。」
そんなイカレ野郎等いない……いや仮にこなせる人材がいたところで、そんな優秀な存在が徒労を望む馬鹿であるはずも無く、主の言葉には当然無言。
沈黙する連中の脳内は、モードレッド王子を前線に出せばいいだろ。聖帝なんて自分で戦果あげてるぞ。と、本来比較してはならない二人を並べて評価するが故にどこまでも冷ややか。
そもそも自国どころか、植民地からも食料、金、人員の大半を吸い上げる構造を作っていながら……それにも関わらず絶大な支持を民草から受けるは世界の中心。
人の領域で聖帝に勝てる存在はいない。
だが、これは無理もない事である。
それなりのモンを持っている連中が、あせくせ働きバカみたいなに命をかける前線に行きたがるであろうか?
そもそも君は行きたいか?
無論否!そんなはずが無いのは今も昔も変わらない。何なら私も行きたくない。
人間の大半は他者より裕福な、ある一定基準を超えると……努力や冒険を拒絶。
地主に一番必要な才能は動かない事。とはよく言ったものである。
実際に、実力以上の事をして全てを失った人間を、君も見た事はあるだろう?
──
ガザール戦役に横から、全てを掻っ攫おうと征服王が乱入してくる事を、とある動きが戦争法を完全無視しているのでは?と議論を産む鬼手が繰り出される事を!
お役所仕事丸出しな国連の適当な対応に、世界中が知っていた。と返す事を。
そして、
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